「熱海-黒磯270km」を走る長距離列車の全貌 ロングラン通勤電車が1都5県を駆け抜ける

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外回り中の男女ビジネス客、買い物、リクルートスーツ姿の若者等、都会の日常的な混雑を呈して、横浜から品川へ。途中の鶴見付近で湘南新宿ラインと袂(たもと)を分かつ。

13時09分、改良工事が続く品川駅に到着する。品川は上野東京ラインの1つの核心だ。品川を出ると右側は整然とした車両基地、左は広大な工事現場が広がる。かつての品川車両基地跡地が、東京都心に残された最後の超一等地として「グローバルゲートウェイ品川」のコンセプトの下で再開発中である。

先頭部が銀色の車両はE231系、白い車両はE233系で併結の機会も多い(写真:杉山 慧)

古い車両基地を縮小整理し、生まれた土地に国際的な街をつくる。山手・京浜東北線の田町―品川間には東京オリンピック・パラリンピックの2020年に新駅が開業し、未来都市が街びらきとなる。一方から見れば、その再開発のために都心の車両基地が縮小され、その車両基地を最小限でしか必要としない運転形態に変えるため、新たな直通系統として上野東京ラインを作った。品川開発と上野東京ラインは表裏一体の関係にある。上野から常磐線も品川まで乗り入れており、都心のビル街に姿を映すE657系特急「ひたち」「ときわ」も定着した光景となった。

東京駅停車はわずか1分

東京到着は13時18分。熱海から1時間46分である。いまやすっかり中間駅の態で、東京駅で折り返す東海道線列車は特急とライナー、そして普通列車は早朝・深夜だけになった。しかし、東海道線としての乗客の動向は変わることなく、ビジネス客がごっそり下車した。

その一方、上野とつながったことで、山手・京浜東北線に乗り換えて都心と往来していた宇都宮線、高崎線、常磐線の乗客を上野東京ラインが引き受けることになり、すきはしたものの新たな乗客が加わった。乗務員も交替し1分だけの停車時間で上野東京ラインの上野東京ラインたる区間に踏み出した。

東北新幹線の高架の上に上がり、下りると秋葉原の電留線や上野駅進入ルートの複雑な分岐の関係から山手線よりもゆっくりと進み、上野へ到着した。運転士はまた交代したが、車内放送は同じ声で続いている。

列車がスルー運転する高架ホームにいては見過ごしてしまうが、上野駅は上野東京ラインの開業により地平ホームの様子が激変した。常磐線特急も品川直通で高架ホームに移った結果、往時の活況が幻に感じるほど閑散とした。昼間は宇都宮線、高崎線の上野折り返しで1時間に1本ずつが発着する程度で、本数が増える朝晩も利用者の多くは直通電車を志向するので、地平ホーム利用が理にかなう人は上野・御徒町周辺や地下鉄からの利用者に偏っているのではないか。

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