ホンダ「N-VAN」考え抜かれた姿形が得た果実

随所の設計は荷物だけでなく人にも優しい

デザインを担当した本田技術研究所デザイン室1スタジオ主任研究員の山口真生氏は、その結果さまざまなことが見えてきたと語った。

「最初は建材のコンパネ(1800×900mm)が水平に積めるぐらい広い荷室が望まれていると思い、運転席まわりを可能なかぎり切り詰めた空間を提案したら、多くのユーザーからダメ出しされました。『そんなに積む人いまどきほとんどいない』と。『それよりも疲れずに使えることを目指してほしい』と言われました」

これまでの軽商用車は荷物を人より優先していた。それをN-VANでは、荷物の重要性はそのままに、人の優先度をそれと同等にまで高めることを目指すようになったという。

助手席までフラットになるシート(筆者撮影)

その結果、空間については後席だけでなく助手席もフラットに畳むことで、運転席まわりの空間をしっかり確保しながら2.5mを超える長さの空間を確保。横からの荷物の出し入れをしやすくするために左側のセンターピラーを取り去った。その一方でシートは軽商用車らしからぬ贅を尽くした。

「シートは人への優しさから。姿勢やサポートで応えました。軽商用車のユーザーも高齢化が進んでいて、腰痛が気になったりしている。そこでまずは正しい姿勢で運転できることを心掛けました。サイドサポートは乗り降りに支障のない範囲で付け、ペダルもドライバーに正対しています。シート高も腰が並行移動するように乗り降りできるレベルにしました」

形状が異なる運転席と助手席(筆者撮影)

助手席が運転席とまったく違う形状であることも目を引く。ここまで違う自動車は珍しい。もちろん折り畳み可能としたためだが、それでも座り心地を良くすべく、ここだけ内部のクッションをウレタンではなくスプリングにしたという。座ってみるとたしかにウレタンとは異なる感触で、薄いけれど心地よい着座感だった。

荷室にも工夫

荷室にも工夫がある。リサーチの結果、この空間はユーザーの手で棚を構築している人が多かった。しかし多くの自動車の荷室は建築物とは異なり、上に行くほど狭くなっている。これでは棚板の長さを微妙に変えなければいけない。そこでN-VANでは合計28個のネジ穴を用意するとともに、思い切って左右幅を下から上まで同一とした。

垂直に近いサイドパネル(筆者撮影)

言葉で表すのは簡単だが実際は大変な作業だ。ボディのサイドパネルは横風対応を含めた空力特性を考慮して、末広がりにすることが求められる。しかも平面より曲面としたほうがパネルの強度を出しやすい。しかし車内の壁面は平らなのである。

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