WOWOWが「テニス中継」に全力でこだわる理由 報われない20年間を、「錦織選手」が救った

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野球やサッカーなどのスポーツとは異なり、テニスには「ラリー中は静かに見守る」という観戦マナーがある。そのため、実況・解説も視聴者の邪魔をしないように、ラリー中は無言を貫き、プレーの流れと空気を読みながら話している。この姿勢は熱心なファンから支持されてきた。バラエティ番組のようにスポーツを中継する地上波各局とは正反対といえる。

ただし、新規のファンを置き去りにしているわけではない。選手の入場から試合前の練習時間を使い、選手の経歴やプレーの特徴などをわかりやすく説明するようにしている。そのほか、現地取材による最新映像や選手のインタビューなども、ファンを引き付ける重要な要素になっている。

大勢のスタッフが現地で“目利き”

放送だけではない。加入者限定のネット配信サービス「メンバーズオンデマンド」もフル活用する。テレビ放送は日本人選手や有力選手の試合が中心だが、「ピックアップコート」というサービスを設け、放送しない注目の試合を最大4コート、ネット中継している。

「ピックアップコート」という配信サービスでは、テレビ放送されない試合も楽しめる。グランドスラムでは、ハイブリッドキャスト(ネット経由でコンテンツをテレビ上に配信する仕組み)を用いて、テレビでも視聴できるように実証実験を行っている(写真:WOWOW)

どの試合を配信するか決めるのは現地に飛んだスタッフだ。グランドスラムのたびに総勢50人ほどが2週間、現地で取材をこなしている。4大大会は約20のコートで試合が進行しており、その中から、選手のランキングのほか、会場の盛り上がりなどの空気感を加味して試合を選んでいる。

2018年にはコンテンツを強化すべく、「男子テニスATPワールドツアー」のライブ配信も始めた。同ツアーは男子プロテニス協会の組織下にあるツアー。グレード別の大会が世界各地で毎週開催され、選手は試合に出場してポイントを稼ぎ、よりグレードの高い大会の出場権を得る。錦織選手をはじめとする日本人選手も参加している。ファンはほぼ一年中、テニス中継を楽しめるようになった。

WOWOWの目玉コンテンツに上り詰めたテニスだが、かつてはマイナーなコンテンツだった。人気が爆発するまでに、実に20年以上の歳月を費やした。

テニス中継の歴史は古い。1991年に開局したWOWOWは、1992年にウィンブルドンを除くグランドスラムの放送をスタートさせた(ウィンブルドンは2008年開始)。テニスを選んだ背景には、開局時の方針としてスポーツ放送を掲げていたことがある。野球などメジャースポーツの放映権は地上波のテレビ局が押さえていたという事情もあった。

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