資本主義は、「ショウ=見世物」にすぎない

天才哲学者ガブリエルが考える世界の構造

セドラチェク:なるほど。ポイントが2つあります。私たちは、「ティーパーティ」(オバマケアに代表されるオバマ前米政権の統治理念への反発から広がったアメリカの草の根保守運動。2010年ごろからアメリカ政治の表舞台に姿を現した)につながる右派のドナルド・トランプが自由貿易に反対する時代に生きています。

今の状況はこうです。かつては中国には貿易障壁があって、100年前、人々はそれをあまり賢くないやり方だと思っていました。しかし、今では中国はより強固な壁、中国人を守るもっと強固な方法、中国人を豊かにさせるもっと強固な手法を見つけました。それは世界と自由貿易をすることです。立ち位置が正反対になってしまいました。

中国は長い間自由貿易に反対して、壁で自分たちを守ってきたのに、それが今では、中国は自由貿易の最大の支持者になりました。ドナルド・トランプとは正反対です。これはある意味、皮肉ですし矛盾だと思います。

ガブリエル:そうですね。けれど、もし、私が申し上げたように、資本主義が代替えのないショウだとするとどうでしょう。そうだとすれば、ドナルド・トランプの戦略は従来の戦略とまったく異なると言えます。重要なのは鉄鋼会社を守ることでも、雇用を守ることでもなく、ショウを売ることです。今のアメリカの政権が富を生み出す方法は、まさしくショウ形式によるものです。そうなると最近の最強のアメリカ製品の1つは……。

セドラチェク:見世物ですね。

ガブリエル:ええ、見世物です。

セドラチェク:同感です。私が言いたいポイントは、共産主義体制が資本主義的プロパガンダに寄っていって姿を変えているということです。

ガブリエル:確かにそうです。

資本主義がコントロールできないこと

セドラチェク:マルクスは「われわれは己が作り出す制度に責任がある」と言いました。すばらしい言葉だと思います。経済について話したり教えたり読んだりするときにつねに頭に浮かぶ言葉の1つです。

もし私が腕時計を作ったとすれば、それを分解することも、再び組み立てることもできます。しかし、誰かにもらった腕時計は、その動きを予測することはできても、壊れてしまったらどうしていいかわかりません。つまり、資本主義は基本的に意図したことと意図していないことの組み合わせで成り立っています。私たちはその視点に立つべきです。

書籍の元となった番組「欲望の資本主義」の企画開発者、プロデューサーの丸山俊一さんと、タレント/キャスターとして活躍する、堀口ミイナさんによるトークセッション「ココロとカラダと資本主義」が7月22日(日)15:00より本屋B&Bにて開催。本書の関連番組「欲望の時代の哲学~マルクス・ガブリエル 日本を行く」はNHKのBS1で7月15日(日)22:00~放映予定(撮影:今井康一)

資本主義について、私が指摘しておきたいのは、「生産」という興味深い現象についてです。なぜなら、私たち人間が唯一行っている真の生産活動は繁殖、つまり出産だからです。人間は物質を生産するのではなく繁殖します。

不思議なことに今日の社会では女性が妊娠すると、つまり、最も純粋な意味で再生産すると、その女性は生産性がないと考えられてしまいます。本当の意味での人間にとっての財産を生産しているのに、その女性は生産性の低い社会の一員だとみなされるのです。

ガブリエル:そのとおりですね。資本主義社会では、生産をしない子どもは負担ですし、出産や母親も負担です。生産性の低い移民労働者もです。これらは、自然に属する存在で、人工的なモノではありません。資本主義社会では、人工的でないものを処理するのが非常に難しいのです。一般的な生産の条件である資本主義の測定単位を適用できないからです。

だからこそ、出産は宗教的な体験なのです。今日でも出産は生死の問題だからです。現在、資本主義がまだコントロールできないことがもう1つあります。閉ざされた資本主義社会に対する攻撃の1つはテロです。これもまた、生死の経済です。

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