学校で広がる「起業家教育」、成功の2つの鍵 半径50センチ革命を起こす力を育てるには?
この2つの視点を持った「起業家教育」が学校教育で実践され、その価値がすべての生徒に届くことがこれからは求められる。教育の中で新たな価値を届けようとするのであれば、学校や地域ごとのオリジナリティは積極的に目指されつつも、価値自体は普遍的に、すべての子どもに届けられるようチャレンジされるべきである。
経産省は、「学びと社会の連携促進事業(「未来の教室」(学びの場)創出事業)」と称し、平成29年度の補正予算として25億円を用意し、「未来の教室(学びの場)」の創出のための公募事業をすでに開始している。様々な教育事業者がこの事業を通して学校教育と協働しながら、新たな人材育成のための教育に取り組んでいくことだろう。
その中で、「様々な課題に取り組むチェンジ・メイカーを育成する」というビジョンに則って、「起業家教育」に近い教育も数多く行われていくことだろう。そのとき、これまで述べてきたポイントを押さえて、学びのプロセス設計の工夫と、それを普遍化することにこそ、多くのエネルギーが注がれることを期待したい。
子どもの成長はある日突然訪れる
そして最後にもう一つだけ忘れてはいけないことがある。「人という資源」への投資のためと言って教育に関わるのならば、最も注意しなければならないのは、「多くの場合その投資は指数関数的にしか成果にはつながらない」ということである。何か刺激を与えることですぐに成長する子どもばかりではない。学校現場や教員の方と接点を多く持つ筆者からしてみればむしろ、子どもは長い沈黙を経てある時を境に急激な成長を遂げることのほうが圧倒的に多い。
特に、いま必要とされている能力として掲げられているようなものは、反復トレーニングで身につくものではないため、その傾向は更に強いだろう。しかもその曲線が上向き始めるタイミングは人それぞれ、何がそのテコとなるかもわからない。取り組んでいるなかで、「もしかしたらこの方法では効果はないのではないか?」と思うことのほうが多い。しかし大人にできるのは、子どもの可能性を信じ続けること、そして寄り添って待ち続けることなのだ。
最重要資源である人も当然有限である。この時代においては、人口という意味での有限性ももちろんだが、人が持つ意欲や関心も、大人の関わり方やプログラムによっては限界がすぐに訪れる。その子が「伸びない」と感じたとしたら、それはその子どもの成長曲線が上向くまで待てなかった、あるいは上向くような環境を用意できなかった、もしくは上向く方向を見定めることができなかったことの問題なのである。それを生徒側の限界と捉えてはいけないということも、肝に銘じておきたい。
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