ソニーの「プロ向けミラーレス」が伸びた理由 欠点を克服しメリットが認められた

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画質だけではない。α9で搭載したイメージセンサーは、世界で初めて積層構造を採用した。回路部分と画素領域を別の層として重ねることで、高速で信号処理を行う回路を拡張できた。こうした努力によって、光を信号に変えて読み出すスピードが従来モデルに比べて20倍以上高速化した。その他にも画像処理エンジンなどの改良を行うことで、「α9は肉眼で見たように撮影できるレベルに到達した」(広報)。

信号処理の遅さというミラーレスの弱みを克服するメドが立ったわけだ。しかも、ミラーレスは構造上、一眼レフよりも連写性能を向上させやすく、一眼レフを超える連写速度を持つ製品もある。小型軽量で、価格の割にスペックが高いミラーレスを出すことによって、プロからの支持が増えているのだ。

プロにとって、カメラそのものの性能に加え、自身のカメラが壊れたときの代替品貸し出しなどのサービスも重要になる。ソニーは2014年からこうしたプロサポートを始め、現在日本では5箇所あるソニーストア(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡)、世界では22カ国でサポートが行われている。プロサポートを担当するソニーマーケティングジャパンの北村勝司シニアマーケティングマネージャーは、「全世界でのサポートを順次増やしていく」と話す。

「カメラといえばソニー」を目指す

ソニーはなぜプロ市場を重視するのか。岩附統括課長は「将来『カメラといえばソニー』といわれる存在を目指しており、プロに使ってもらって認められてこそカメラメーカーという思いがあった」と話す。レンズ交換式カメラは趣味性が強く、憧れのプロが使っている機種というブランド力が重要になる。またプロからの厳しいフィードバックが、カメラの製品開発に活かされるという側面もある。

キヤノンやニコンも、2018年度中にもフルサイズのミラーレスを出すという噂が絶えない。現在の「一眼レフ対ミラーレス」という構図に、「高級ミラーレス同士の戦い」という側面が加わる可能性がある。それでもソニーの市場を先導する立場は変わらないのか。高級ミラーレスでの戦いは激しさを増しそうだ。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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