北朝鮮の「非核化」費用、一体いくら必要か

基本を押さえておこう

これまで、国家が自主的に核兵器を放棄した例はわずかしかない。それらは特殊な状況下で実現したもので、必ずしも参考にならなない。

南アフリカは、1994年にアパルトヘイト(人種隔離政策)を撤廃する直前に核計画を放棄し、核兵器を解体した。旧ソ連圏の数カ国も、1991年にソ連が崩壊すると核兵器を手放した。その中でもっとも保有核兵器数が多かったのは、およそ5000発持っていたウクライナで、廃棄までもっとも時間がかかった。

南アフリカは、保有していた6つの核爆弾を解体し、関連書類の多くを破壊し終えるまで核兵器計画を秘密にしていた。このため、核廃棄にかかったコストは不明だ。核兵器は数カ月で解体されたという。

ウクライナには、核弾頭約1250発を備えた地上発射型の戦略兵器があったが、国防当局者によると、ミサイルを発射するサイロの解体のために米国が3億5000万ドルを負担したという。

最盛期には、ウクライナの核兵器保有数は世界3位の規模だった。

北朝鮮のそれはずっと小さいが、具体的な保有数は知られていない。複数の専門家は、30発程度と予測している。

非核化コスト

不透明な部分が多いことから、ほとんどの専門家は、非核化コストについて「数十億ドル(数千億円)」とする以上の、詳細な予測を行うことについて消極的だ。

「北朝鮮の核施設の大部分を解体し、片付けるには、数十億ドルのコストと10年程度の期間が必要だと考えるのが妥当だろう」と、2010年に寧辺を訪れた米スタンフォード大のシーグフリード・ヘッカー教授は言う。これにはミサイル施設は含まれない。

米議会予算局(CBO)は2008年、寧辺の原子炉と、周辺にある燃料棒製造用と使用済み燃料からプルトニウムを抽出するための2施設を解体し、北朝鮮から使用済み燃料を搬出して再処理するためのコストを5億7500万ドル(約636億円)と試算している。また、それには4年程度かかるとしている。

北朝鮮の核活動と保有核物質は2008年以降、急激に増加している。今では、寧辺近くに第2の原子炉が完成間近となっている。またCBOの試算は、ウラン濃縮や兵器関連施設、ミサイル技術やウラン鉱山などは含まれない。

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