サイゼリヤが「マリアーノ」に力を入れるワケ 最強外食チェーンはオフィス街を狙っている

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現状、サイゼリヤの売上高は2017年8月期で1483億円(海外311億円含む)、営業利益112億円(対売上比7.6%)。3期連続で増収増益となっており堅調だ。既存店伸び率は前期では前年割れ月が一度もなく通期で102.6%。今期は月ごとの増減はあるものの5月末時点で99.4%を確保している。

同社では出店の中心をショッピングセンター(SC)内に置き、一定の集客を確保しつつ、同時に駐車場コストの軽減を図ることでサイゼリヤ業態の収益性を維持している。その一方で、「サイゼリヤ」に続く今後の出店の柱と目されているのが、この「マリアーノ」なのである。

マリアーノが狙う「新マーケット」

マリアーノでは店内に約30~60の席を有する。メニューはサラダ付きで500円(Wサイズで600円/ランチセット)。来店客は入り口の自動券売機で注文、その後、トレーを持って、カウンターに券を渡す。注文を受けた厨房では、センター納品されたパスタを湯煎、電磁調理器によりフライパンでパスタソースを絡めるだけ。店内でうたっているように1~2分での高速提供となっている。

またコーヒーとのセットで250~290円のモーニングセットの提供も行う。オフィス街立地を生かしてランチだけでなく、モーニング需要の獲得も図っている。

以上のマーケットはコンビニの主戦場でもある。コンビニにとって、パスタは弁当、おにぎりに続く主力メニュー。特にセブン-イレブンは3週間ごとに具材、製法などを改良した新メニューを投入しており、販売数の底上げを進めている。またモーニング需要は多くのファストフード、コーヒーショップチェーンでも取り入れており、さらにセブン‐イレブンでも「朝セブン」と称したコーヒーとパンを組み合わせた時間帯キャンペーンを定期的に行っており、強力な集客源となっている。

このようにサイゼリヤが新たに取り込もうとする「オフィス街」「ランチ・モーニング」マーケットは激戦だが、主力商材がパスタであるだけに後退も許されない。ただし「マリアーノ」が持つメニュー、オペレーションなどのコンセプトは、「オフィス街」「ランチ」マーケットの獲得にとどまらず、SCをはじめとしたさまざまな商業集積におけるフードコート出店へと可能性も広がる。茅場町のリニューアルオープンはじめ、立て続けの出店にはその意図を感じる。

(文:「商業界オンライン」解説委員 山本恭広)

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