北朝鮮カルト政治を絶賛するトランプの末路 過去にも絶賛し心酔した政治家は多かった

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チャウシェスク(左)と金日成(写真:北朝鮮ニュース)

1971年6月に北朝鮮を公式訪問したルーマニアの独裁者、チャウシェスク氏は、金日成主席に対するカルト的な個人崇拝や、国民を大量動員できる北朝鮮政府の力、プロパガンダを担う国営メディアに心酔して帰国した。

その後、ルーマニア共産党の中央委員会で自国のメディアを北朝鮮のようなものに作り替える必要があると述べた。「(プロパガンダ体制を革新するという)われわれの結論は正しい。私が中国や北朝鮮で見聞したことが、その生きた証拠である」とチャウシェスク氏は語っている。

マスゲームに感銘を受けた

チャウシェスク氏が特に感銘を受けたのが、マスゲームなどに国民を大量動員できる北朝鮮政府の能力だ。同氏の訪朝時には大量の国民が平壌の街に駆り出され、歓迎イベントが催された。北朝鮮の軍国主義的な大規模集会に感化されたチャウシェスク氏は、同様のイベントを首都ブカレストで再現しようと試みたが、何の役にも立たなかった。チャウシェスク夫妻は1989年、革命軍の手で処刑され、遺体の映像が国営テレビによって放送される羽目になる。

多くの独裁者がマスゲームに感銘を受けた(写真: Eric Lafforgue)

チャウシェスク氏がなろうとしていたのは、金日成氏のような個人崇拝に支えられた絶対的独裁者だ。1971年の中国・北朝鮮歴訪に続いて行われた「7月テーゼ」と呼ばれる演説は、そうした体制を作り出す目的で行われた。スターリン時代のような全体主義を持ち込み、自身への個人崇拝を強要するという国家変革運動は、チャウシェスク氏が北朝鮮で目にしたものに強く影響されている。

チャウシェスク氏はソ連(当時)から距離を置きたがっていた。そんな同氏が自主・独立を掲げる北朝鮮の「チュチェ(主体)思想」に惹きつけられたのは不思議ではない。経済における自立と政治における独立を掲げ、民族主義を貫く北朝鮮にルーマニアの独裁者は魅了された。1970年代初頭にはチュチェ思想に関する書物がルーマニア語に翻訳されてもいる。

トランプ氏は制裁関税を次々に発表し、国境を閉じるのに熱心だが、チャウシェスク氏とは違って「チュチェ」などという言葉は耳にしたこともないはずだ。この点は不幸中の幸いというべきかもしれない。

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