懸念される佐藤社長の求心力低下 みずほFGは経営再生できるのか
[東京 28日 ロイター] - みずほ銀行による暴力団員らへの融資問題は28日、みずほフィナンシャルグループ(FG)<8411.T>が佐藤社長の半年間報酬ゼロや塚本隆史同銀会長の引責辞任など処分案を発表し、経営再生に向けた一歩を踏み出した。
ただ、佐藤頭取の組織内での求心力低下は必至で、同社の戦略が思い通りに展開できるか暗い影が差している。
<ガバナンスのぜい弱さ露呈>
「私の求心力に傷を負ったと感じている」ーー。同日夕、記者会見した佐藤社長は、こう認めざるをえなかった。暴力団向けに融資を放置していたことに加え、金融庁対応の不備、その後に二転三転した事実関係の食い違いが、立て続けに明らかになったためだ。
今年7月、みずほFGは、長年の懸案だった傘下銀行2行の統合を実現した。佐藤社長はその当時、「傘下の銀行、信託、証券を結集させ、本格的な金融グループとして他行と差別化を図る」と力説し、1バンク体制による収益力向上の進展を強調した。
しかし、一連の事案で明らかになったのは「ガバナンスの根幹が脆弱」(大手行企画部)なみずほの足元の現状だった。
<内部管理体制の再構築に削がれる経営資源>
佐藤社長は会見で「もう一度(コンプライアンスなどの)『守り』を固めなければならないのは確か。しかし、攻めの姿勢をやめるわけにはいかない」と強調した。
だが、みずほのある幹部は「しばらくは、内部管理体制の構築に力を注がざるを得ない。信頼回復がまず重要」と、組織立て直しに力が削がれるとの見通しを示している。
強いリーダーシップを誇り、"長期政権"も期待された佐藤体制だが「これで長期政権はなくなった」(同行幹部)との指摘も内部でささやかれる。佐藤社長の求心力が失われれば、組織の流動化や空洞化が進む恐れもある。
<勝負所の国際展開、再生の試金石に>
国内市場が頭打ちになる中、メガバンク各社は成長の源泉を海外に求めざるを得ない状況に直面している。
三菱東京UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>がタイの大手銀行の買収を決断し、三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>もインドネシアの現地銀行への出資を決めるなど、ライバルのメガバンクは矢継ぎ早に布石を打っている。
この日の会見で「国際部門の収益は、他メガに劣っている状態ではない」と強調した佐藤社長だが、コンプライアンス体制の確立が前提となって、初めて収益体制が確立されるのが金融業の構造だ。
金融業界の関係者からは、内部管理体制の再整備に注力せざるを得ないみずほが、他の2メガから収益的に水を空けられるリスクが増しているとの指摘が出ている。留任した佐藤社長にとって、「辞任」以上の苦難が待ち構えている可能性もありそうだ。
(布施 太郎 編集;田巻 一彦)
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