世界で広がる格差拡大がもたらす3つの懸念 資源競争は戦争を引き起こしかねない

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――格差は今後、より広がっていくでしょうか。

それは不確かです。格差がさらに広がるかどうかは、日米のような裕福な国の政策にかなり左右されます。先進国が発展途上国に行う対外援助にも影響されるでしょう。

貧しい国の状況が変わらない、もしくはより悪化すれば、格差は拡大すると思います。新興感染症やテロリズム、移住の問題がさらに出てきます。先進国が対外援助を行い、貧しい国が裕福になるように聡明な政策を実行すれば、格差は広がらず減少するでしょう。

「グローバルな崩壊」の淵で

――格差の要因の一つであるグローバル経済は、この数年でますます発展を見せています。グローバル化をどのようにご覧になっているでしょうか。

世界経済がますますグローバル化する中で、最近の人類は歴史上初めて、「グローバルな崩壊」を経験する可能性が出てきました。今日では各国の経済が相互につながっているので、一つの国家の経済が崩壊すると、ほかの国の経済に甚大な影響を与えることになります。

歴史上、社会は一つひとつ崩壊していきましたが、お互いに影響しないことが多かった。イースター島の社会が崩壊したとき、世界の誰もその事実を知りませんでした。今では、たとえばソマリアやアフガニスタンが事実上崩壊すれば、それはほかの大陸の国にも多大な影響を及ぼします。それほど各国は政治的・経済的に密接に絡み合っているのです。

――では、格差のほかに現在の先進諸国が包含するリスクとは何でしょうか。ダイアモンドさんはかねがね、「どの文明も崩壊するリスクがある」とおっしゃっています。

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現在の先進国は端的にいえば、「持続可能性がないコース」を突き進んでいます。そのため、つねに崩壊のリスクにさらされているといえます。われわれ人類は、地球が資源をつくるのが追いつけないほどのスピードで、資源を大量に消費しています。ですからこのままでは、資源の不足による「直接的な崩壊」か、資源をめぐる競争が戦争を引き起こすことによる「間接的な崩壊」は避けられないでしょう。

――資源の問題で言えば、2011年、日本は東日本大震災と福島原子力発電所事故という破局的な災害を経験しました。現在でも、いまだ復興が進んでいない地域もあります。

事故の経験から、日本人が原発について懐疑的になっているのはよく理解できます。しかし、その代替手段を考えなければなりません。空気汚染や気候変化を起こす火力発電のリスクと、原発事故が再び起きて、多くの人々が亡くなったり健康被害に苦しんだりするリスクとを秤にかける必要がある。日本は今選択を迫られているのです。

大野 和基 国際ジャーナリスト

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おおの・かずもと / Kazumoto Ohno

1955年、兵庫県生まれ。1955年生まれ。東京外国語大学卒業。米ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。生殖医療や、国際的な知識人への取材を行う。編著書に『未来を読む』『知の最先端』(以上、PHP新書)、『英語の品格』(ロッシェル・カップ氏との共著、インターナショナル新書)、『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版)、訳書に『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書)、『コロナ後の世界』(筑摩書房)『5000日後の世界』(PHP研究所)、など多数。

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