東急の渋谷再開発、成否のカギは「回遊性」だ 東横線跡の新施設は「訪れたい場所」になるか

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こうした渋谷と隣町をつなぐ「途中のチェックポイント」ともいえる位置に集客施設があることで、渋谷駅前を起点に南北ともに隣町へ回遊性のあるルートを構成することを狙っていることがわかる。それゆえに、今回生まれる2つのルートでしっかりと新たな人の流動を生み出すことこそが「Greater SHIBUYA」実現のために重要となるのは間違いない。

渋谷は1973年にセゾングループが進出、1970年代からライブハウスが多く生まれ、1980年代以降はミニシアターの密集地ともなっていった。そして「渋谷系」と呼ばれる音楽やファッションの流行を生み出してきた。映像産業・音楽産業の集積はビジネス面でも強い。

そして2000年代初頭からはIT企業が多く立地するようになった。一時期、渋谷は「ビットバレー」とも呼ばれ、多くのIT企業がひしめく場所となったが、それらの企業は規模が大きくなるにつれ、渋谷ではオフィス床面積が足りなくなり転出する例も出てきた。一方で現在もオフィスの空室率は低く、近隣の恵比寿やさらに南の五反田にオフィスを構える企業も増えている。

渋谷ブリッジA棟で工事中の自由通路(筆者撮影)

こうした歴史や経緯から「Greater SHIBUYA」では周囲のまちを巻き込んだまちづくりだけでなく、クリエーティブ・コンテンツ産業の中心地としての渋谷を作っていきたいという意気込みがあるようだ。

そのためか、新たに生まれる渋谷ストリーム・渋谷ブリッジはともにビルのコンセプトとして「クリエイティブ」という言葉を盛んに用いている。

3つのビルにそれぞれのコンセプト

しかし、この「クリエイティブ」という言葉を使うだけではコンセプトが一面的に見えてしまうだけでなく、計画を見るとオフィスビルを中心としたまちづくりというような印象も受けてしまう。さらに言えば昨年開業した渋谷キャストも、同じようなコンセプトメッセージや施設内容となっている。

渋谷ストリーム横から南に向かって渋谷川が流れる。現在川沿いに遊歩道を設置する工事が行われているが、今後この風景は「広域渋谷圏構想」によってどのように変わっていくのだろうか(筆者撮影)

そこで、渋谷ストリーム・渋谷キャスト・渋谷ブリッジと3つのビルのコンセプトについてより深いところまで聞いてみた。

「3つのビルは同じ『クリエイティブ』とはいっても、それぞれのエリアに求められているものに合わせています。まず渋谷キャストは個人事業主やフリーのクリエーターをターゲットとしています。そのため、居住スペースやコワーキング施設を設けています。それに対し渋谷ストリームは組織・集団をターゲットにしており、単なるオフィスビルにとどまらないさまざまな機能を入れています。渋谷ブリッジは『暮らす』という要素を入れ込むために保育所が入り、また代官山エリアも意識しています。このエリアでは課題として保育園が足りないということがあり、それを解決するためにこのようなコンセプトになりました」(東急電鉄・広報)

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