ジャガーのEV「I-PACE」はテスラと何が違うか ラグジュアリーEVの激戦がついに始まった

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電気モーターの特性として発進と同時に最大トルクを発するため、スタートダッシュはかなり鋭く、背中をシートに強く押し付けられる。しかもその鋭い加速がほぼ無音で繰り広げられるところが、過去のどのジャガーとも異なる。ただし、従来のけたたましい音をたてるジャガーから乗り換える顧客が寂しがらないように、アクセル操作に連動して疑似排気音を車内に響かせることができるギミックも備わっている。

ただしテスラ「モデルS」や「モデルX」のパフォーマンスモデルのように0-100km/h加速が2秒台といった過激な加速力は備わっていない。130年を超える自動車史において突如出現したといっていいシリコンバレー発の新興自動車メーカーの場合、存在感を示すためにCEOの発言にも商品の性能にも過激さが求められるのかもしれないが、ジャガーにはそれが必要ない。

それでも、内燃エンジンを載せたラグジュアリーモデルの争いがそうであるように、すでにラグジュアリーEVカテゴリーに参入することを表明しているメルセデス・ベンツ、アウディ、ポルシェあたりのプロダクトが出そろったら、ジャガー製EVにも埋没しないための何らかの過激さが必要になってくるかもしれない。

車重2トン超とは思えぬ身軽さ

早くからボディにアルミを用いてきたジャガー。バッテリー重量がかさむ分、他の部分で軽量化が求められるIペイスでもアルミボディを採用した。そのおかげというべきか、それでもというべきかわからないが、車重は2トンを超える。ところが、それとは思えぬ身軽さを備えていることが今回サーキットをドライブして確認できた。

Iペイスは一般にハンドリングのために理想的と言われる前後重量配分50:50を実現しているほか、バッテリーを床に敷き詰めるレイアウトのおかげで重心が低い。同じSUVでも同社の「F-PACE」(Fペイス)よりも130mm低いという。このためコーナーでアンダーステアやオーバーステアに悩まされることなくドライバーが狙ったラインをトレースできた。加減速時も車体はきわめて安定。Fペイス用を最適化したエアサスは路面状態を問わず快適な乗り心地を保ち、そのうえで路面追従性も高い。ハンドリングのよさと快適性の高さを非常に高い次元で両立している。

ところで、ジャガーのモデルラインアップは3つに分けられる。昔ながらのサルーン系は「XJ」「XF」「XE」と車名に「X」が付き、スポーツカーには「タイプ」(TYPE)が付く。そして最近加わったSUVにはすべて「ペイス」(PACE)が付く。

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