ダイハツ、新車で「カワイイ」を封印した理由 女性が開発に参画した「ミラ トコット」投入

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中島氏は「ミラ ココア」の開発にも携わったが、「ココアをマイナーチェンジしていく中で、若い女性がココアは可愛すぎて乗れないという声も出ていた。そこでトコットでは女性メンバーで徹底して市場調査するようにした」という。

シンプルな四角いラインと水平基調のデザイン、丸いヘッドランプが特徴の外観デザイン(撮影:大澤誠)

女性7人は若い女性に読まれているファッション雑誌を買い集め、おしゃれな人気カフェに何度も出掛けて、流行をつかんでいった。そこで行き着いた一つのコンセプトが、あるカフェのインテリアで見つけた「ブリキのバケツ」という。機能を絞ったシンプルなデザインそのものだ。

だが、シンプルというコンセプトはなかなか周りに伝わらなかった。西山氏は「男性が多い社内で『車は派手にメッキを着けた方がいいに決まっている。こんな安っぽい車のどこがいいのか』と指摘されることが少なくなかった」と打ち明ける。それに対して「いや、そうじゃない」と否定しても、「シンプル=安っぽい」という考えが依然として根強かったという。

役員を前にして担当同士が喧嘩したことも

中島氏も女性陣とともに最後まで戦った。一番苦労したのは1分の1のクレーモデルを作り直したことだ。最近のクルマ作りは3Dを活用してモデルを一回作り込めば良く、作り直しは異例だった。

中島氏は「ほかの人に十分理解してもらっていない中でやったので、すこぶる安っぽい形でできてしまった。それでもう一回作り直してくれと言った。そこではわれわれを理解してくれるモデラーとデザイナーに絞った。理解してくれない人は触るなと。役員を前にして担当同士が喧嘩したこともあるほどだった」と振り返る。

ひとつひとつのパーツを大きくし、すっきりシンプルにした運転席周りが特徴(撮影:大澤誠)

見た目はシンプルだが、安心・安全にはこだわる工夫を満載した。ボンネットの先端の高さを上げることで、運転席に座ったままでもボンネットの先端を見やすくし、前にいる車や壁との距離感をつかみやすくしたほか、一般的に後ろ上がりになっている車の横のライン「ベルトライン」をあえて水平にし、後方をすっきりと見やすくした。女性が扱いやすくするため、パワーステアリングの操舵力も大幅に軽くした。

非常にシンプルな新型車。女性目線で徹底して作り込んだ車は、男性中心の車づくりの現場を変えることはできるのか。社内外に賛否がある中でのダイハツの新たな挑戦は、今後の試金石となりそうだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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