中国食品大手、品質改良で「肉厚の鶏」に活路 遺伝子工学に高い関心

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春に市場が再開されたことで売上げは回復したが、当局が流行拡大を防ぐために一部の市場を完全に閉鎖するなど、市場の閉鎖が日常化するとの予想もある。

また、多忙な若年層の都市住民がもっと利用しやすい食品購入経路を選択するようになれば、こうした[生きた鶏を扱う]市場における需要は減少するだろう。

温氏は、「打開策が見つからなければ、黄毛種の消費量は徐々に減少していくだろう」と言う。

巨大な投資

新規市場での売上げを増やすには時間がかかる。ヤム・ブランズ<YUM.N>やマクドナルド・チャイナなどの企業に供給するためにグローバル規模の養鶏品種改良企業から輸入されるブロイラー種に比べ、中国在来の成長の遅い鶏は、飼養コストが高い。

世界有数の養鶏品種改良企業の1つで、最近エビアジェンに買収されたフランスのハバード・ブリーダーズの専門家によれば、在来種のオスと成長の速い品種のメスを交雑することにより、中国の養鶏企業の競争力は上がるかもしれない、という。

だが新品種の開発は費用のかかる事業である。

ハバードのマーケティング担当ディレクターであるPaulvan Boekholt氏は、「何らかの成果をあげるまでに10─15年は必要だ」と語る。同氏はさらに、数年後の市場需要がどうなるかを予測することも1つの課題だと言う。

在来種に専念していれば、昨年、白毛種のブロイラーに必要な種鶏の輸入の制約となった検疫問題を回避できる。

温氏は、黄毛種の鶏肉を扱う大規模な小売市場が存在するフランスにも目を向けているという。動物福祉への関心により、欧州諸国の多くでは成長の遅い鶏に対する需要が伸びている。

動物福祉への関心は中国ではさほど広がっていないものの、地元の味覚はそう簡単には変わらない。

温氏は、冷蔵の黄毛種鶏肉市場を「ゆっくりと開拓していかなければならない」と語る。

温氏食品は広東省・浙江省に4カ所の食肉処理場を保有しており、江蘇省にも新たに1カ所を建設中だ。また温氏によれば、新規プロジェクトのための拠点も探しているところだという。

さらに同社は、黄毛種鶏肉の購入実績がある香港のフェアウッド・ホールディングス<0052.HK>などのファーストフードチェーンや、スナック菓子メーカーへの販売強化も検討している。

「鶏肉市場における成長の余地はまだかなり大きい」と温氏は語った。

(Dominique Patton 翻訳:エァクレーレン)

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