豊作なのに喜べない、コメ卸の苦しい事情 新米商戦が本格化、店頭価格は1割安でスタート
新米商戦が本格化する中、スーパーなどの店頭でコメ価格が値下がりしている。ある大手スーパーの秋田県産「あきたこまち」の新米価格は5キログラムで1980円。およそ1年前に比べて13%下落している。新潟県産「コシヒカリ」も2080円と12%下がった。
全国農業協同組合連合会(全農)が卸業者に販売する価格(相対価格)も、秋田県産あきたこまち(玄米60キログラム)は直近で1万4600円と8月時点の1万6822円に比べて約12%値下がりし、新潟県産「コシヒカリ」は1万6300円と約9%安い。
つまり相対価格の下落が、店頭価格の値下がりにつながっているのだ。ある卸業者の幹部は「相対価格はもっと下がるだろう。2010年の水準(秋田県産「あきたこまち」で1万2500円程度)まで落ちる可能性もある」という。
大量に余っている前年産米
卸業者が大幅な価格下落を見込む理由は、コメの供給が需要を大きく上回っていることにある。農林水産省が発表している2013年産水稲の作況指数は102の「やや良」で、豊作の見通し。主食用米の収穫量は824万5000トンと予想している。同省は需要の見通しを786万トンと見ており、需給がかなり緩むと見られている。
それだけではない。実は、卸業者は前年の12年産米の在庫を大量に抱えているのだ。卸業者が持つ在庫の合計は8月末で21万トン。これは前年比で6割も多い。過去2年、コメは高値で取引されてきた。10年産米の平均価格1万2,711円から11年産米は1万5,215円に、12年産米はさらに1万6,500円前後と過去にない高値を付けた。
きっかけは2011年の東日本大震災だ。その後、コメの供給不足の懸念が高まったことを受け、全農はコメを集める際に農家へ支払う前払い金を2012年に前年比で2割程度積み増し、コメをかき集めた。それに伴って、卸業者への販売価格である相対価格も上昇した。
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