ゆうちょ限度額、民営化委が引き上げ検討 「通常貯金」「定額貯金」それぞれ1300万円に?

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 6月15日、ゆうちょ銀行の預入限度額を巡り、郵政民営化委員会が、限度額の対象を通常貯金と定額貯金に分けたうえで、それぞれの限度額を引き上げる案を軸に検討していることが分かった。2016年8月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 15日 ロイター] - ゆうちょ銀行<7182.T>の預入限度額を巡り、郵政民営化委員会(委員長=岩田一政元日銀副総裁)が、限度額の対象を通常貯金と定額貯金に分けたうえで、それぞれの限度額を引き上げる案を軸に検討していることが分かった。複数の関係者が15日、明らかにした。現在の限度額は合計で1300万円だが、通常と定額をそれぞれ1300万円から段階的に引き上げ、合計では2倍以上となる案を軸に検討が進んでいる。

だが、限度額変更を実施するために必要な政令改正を担当する金融庁が限度額引き上げに反対し、水面下の調整は難航している。来年夏の参院選を控え、政府・与党の思惑も交錯し、最終的な結論がどのような内容で落ち着くのか予断を許さない状況だ。

現在のゆうちょ銀の預入限度額は、常時引き出しができる「通常貯金」、預け入れ日から6カ月間は引き出しができない「定額貯金」、預け入れ期間を指定する「定期貯金」の合計で1300万円までとなっている。

たとえば、定額貯金はゼロで通常貯金のみで1300万円、逆に通常貯金は利用せずに定額貯金のみで1300万円まで預けることもできる。

しかし、民営化委は、合計で限度額を設定する方式では利用者が使いづらいとして、通常貯金と定額貯金それぞれに上限を設定し、段階的に引き上げる案を検討している。定期貯金は定額貯金に含めて議論している

民営化委は、通常貯金と定額貯金に分け、それぞれの限度額を1300万円に設定する方向で検討を進めている。

仮に限度額を通常貯金300万円、定額貯金1000万円とした場合、すでに1300万円の定額貯金を保有している利用者に対してはサービス低下となり、それぞれの限度額を1300万円にするのが合理的と判断している。

また民営化委は、将来的に1300万円ずつの限度額をそれぞれ引き上げることも報告書に盛り込むかどうか検討している。

しかしその場合は、1人当たりの合計預け入れ可能額が将来、2倍以上に跳ね上がることになるため、民間金融機関などから強い反発を招くのは必至だ。

関係筋によると、民営化委は、通常貯金と定額貯金に限度額を分ける案を通常貯金の限度額撤廃案とともに金融庁に提示した。しかし、金融庁は前週までに反対の意向を伝えてきた。

金融庁は、限度額を撤廃したり引き上げたりすれば、ゆうちょ銀に資金が集中し、低金利の環境下で、ゆうちょ銀の資金運用が一段と難しくなると懸念。

また、ゆうちょ銀株の売却プロセスが不透明な中で限度額を緩和すれば、地域金融機関との協調関係に悪影響を及ぼしかねないとして、限度額の緩和に反対している。 

民営化委は、3年に1度の郵政事業の検証を実施してきた。検証結果を取りまとめる報告書で、限度額をどう記述するかが焦点になっている。

内閣官房の下にある民営化委は、報告書を取りまとめ、安倍晋三首相に提出する。提出後は郵政事業を所管する総務省と金融庁が政令を改正し、実施日等を決める。ただ、報告書の取りまとめに当たり、首相官邸や与党の意向が影響する可能性がある。

一方で、総務省と金融庁の意向に反した内容の報告書を出せば、政令改正の手続きが進まず、限度額の緩和が実現しないリスクもある。

ゆうちょ銀の限度額をめぐっては、野田聖子総務相が、今国会中に方針を打ち出すよう民営化委に要請。しかし、民営化委と金融庁の水面下での調整は難航している。

郵政民営化委員会事務局は、ゆうちょ銀の限度額の検討状況について「コメントできない」としている。

 

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

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