近鉄「フリーゲージ列車」開発宣言の舞台裏 実現が頓挫「フリーゲージ新幹線」の延命策か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

なお、近鉄はFGTの開発を「ほかの鉄道事業者とともに進めていきたい」としている。JR西日本は「近鉄との共同研究は考えていない」(来島社長)とする。また、かつて四国の政財界もFGTによる四国新幹線の実現をもくろんでいたが、現在はフル規格による新幹線導入を待望しているので、JR四国(四国旅客鉄道)が手を挙げることも考えにくい。では、ほかにどのような鉄道事業者が考えられるだろうか。

出所:東洋経済作成

その1つが東京急行電鉄だ。東急多摩川線矢口渡付近から京浜急行電鉄空港線経由で羽田空港に乗り入れる「蒲蒲線」構想の実現に意欲を燃やすが、東急は狭軌、京急は標準軌と、軌間が異なるためその乗り入れ方法が課題の1つとなっている。東急は「現時点でFGTの検討は考えていない」(IR担当者)と言い切るが、もしFGTが実用化されれば、蒲蒲線構想が一気に進む可能性は高い。高速走行をしない分、在在直通のFGTは、新在直通のFGTよりも技術的なハードルは低そうだ。

遮断機が下りないトラブルも

しかし、かつて日豊本線でFGTの走行試験が行われた際、信号設備が車両の走行を感知できず踏切の遮断機が下りないという危険なトラブルがあった。JR九州の青柳社長は「対策が講じられた今の試験車両ではそうしたトラブルは起きない」としたうえで、「走行試験は徹底的にやったほうがいい」とアドバイスをする。

もしFGTの検討が本格的に進めば、橿原神宮前駅にFGTの軌間変換装置を設置したうえで、試験車両を用いた走行実験が行われることになるだろう。これまで同様、開発費用は国が負担することになるかもしれない。その費用は決して安いものではないはずだ。今回の近鉄のFGT検討が、風前の灯火となっている新在直通のFGTの延命策でないことを祈りたい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事