近鉄「フリーゲージ列車」開発宣言の舞台裏 実現が頓挫「フリーゲージ新幹線」の延命策か
北陸新幹線でもFGTの導入が検討されていた。フル規格による全線開業までのつなぎ措置として、2022年度の北陸新幹線・金沢―敦賀間開業時に、敦賀―新大阪間について、FGTが在来線の湖西線を走るという構想である。長崎新幹線向けのFGTをベースに寒冷地仕様の改造を施す予定だった。
長崎ルートがFGTの導入断念を明確化した以上、北陸新幹線への導入も非現実的だが、運行を担うJR西日本(西日本旅客鉄道)の来島達夫社長は「引き続き動向を見守りたい」と明言を避けてきた。しかし、5月24日の会見で、「開業まで5年を切っている段階での導入は難しい」と発言、こちらも事実上のFGT不採用宣言となった。
こうした情勢下にあっても国交省は車軸摩耗対策の研究を継続しており、将来の実用化への望みを捨てていないが、長崎新幹線や北陸新幹線が望み薄となり、FGTはどの路線を走るのか。そこに飛び出したのが、近鉄のFGT検討宣言である。
これまでの消極的態度から一変して、FGTに前向きになった理由について近鉄側は「さまざまな検討を重ねた結果、この日の判断に至った」としか語らない。一方で今後については、「国交省と相談しながら検討を進めていく」としている。
そこで、国交省でFGT開発を所管する技術開発室に問い合わせたところ「近鉄のリリースに記されている情報しか承知していない」との回答があった。「今後の進め方についても何も決まっていない」という。
来年度以降の予算獲得がカギ
つまり、詳細は何も決まっておらず、性急に事が進んだようだ。「近鉄が独自に開発を進める」という報道もあったが、近鉄は新型名阪特急の導入などで投資がかさんでおり、「FGT開発に大きな資金は投入できない」と見る関係者は多い。
逆に国交省には近鉄にFGT開発を進めてほしい理由がある。それは予算の問題だ。路線の改良よりは安上がりとはいえ、FGT開発にもこれまで400億~500億円の国費が投入されている。
今後もFGTの開発を続けるためには、来年度以降の予算獲得は不可欠。新在直通のFGTが暗礁に乗り上げた今、在在直通のFGTを同時に検討することで実現可能性を高める意図が働いてもおかしくない。財務省との予算折衝は夏ごろから始まるので、逆算すればこのタイミングしかないわけだ。
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