金正恩が軍幹部に「イエスマン」を据えた狙い 「非核化」への布石か

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4つ星の大将である金秀吉氏(68)は金委員長が最も信頼する側近の1人で、さまざまな軍の視察や公的行事に同行している。

同氏は、2013年12月に行われた、金委員長のおじで実力者の張成沢(チャン・ソンテク)氏の粛清・処刑に関与した。その翌年初めに平壌市党委員長に抜擢されている。マッデン氏の言葉を借りれば、張氏の側近が多くいる運営組織を「大掃除」するために任された仕事だった。

秀吉氏の軍総政治局長への起用は、軍に対する党の支配を強化する金委員長の取り組みの一環であると、調査・分析を行う米非営利組織CNAの国際問題グループ責任者、ケン・ガウゼ氏は話した。

お墨付き

新たに起用された3人は皆60代ではあるものの、前任者よりは若い。

この3人はまた、2016年5月に最高意思決定機関である党政治局の局員代理に選ばれている。

専門家によれば、李永吉氏は2013─16年に軍総参謀長を務めたが、その後に短期間ではあったが失脚したと伝えられている。

同氏は2000年代初め、平壌を囲む一帯を防衛する軍部隊の司令官だった。ガウゼ氏いわく、北朝鮮の指導者によって「個人的に選ばれる」のが伝統である重要なポジションだという。

2013年3月、米戦略爆撃機が韓国上空を飛行後、ミサイル部隊に米韓軍事施設への攻撃「スタンバイ」を命じるため金委員長が深夜に召集した会議に同氏は出席していた。

2016年2月、同氏は一時的に第一副総参謀長に降格され、階級も1つ落とされた。その理由は明らかにされていない。韓国の情報当局者は当時、汚職と職権乱用の嫌疑で処刑されたとしていたが、それから3カ月後には党政治局員候補として主要な党の集会に姿を現した。

人民武力相に抜擢された努光鉄氏(62)は比較的知名度が低いが、かつてはミサイル・核プログラムを含む防衛装備品の製造を監督する第2経済委員会の委員長を務めていた。

「信頼できなければ当てられないポストだ」と、韓国政府系シンクタンク、韓国統一研究院(KINU)のホン・ミン北朝鮮研究室長は言う。

「金正恩氏の時代に有望で信頼できる側近として頭角を現した。彼が人民武力相になるのは全くおかしくない」

(Hyonhee Shin and Josh Smith 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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