定年後再雇用の給料、2割減は当たり前なのか

最高裁の判断から合法的なラインを探る

ただし、この制度を設計したのは立法府である国会です。日本では三権分立によって司法府である裁判所は独立した立場で判決を下すので、再雇用後の賃金が6割以上で合法だとは必ずしも考えられません。

業務直結の手当は不支給にできない

今回の判決にあたって、最高裁は賃金低下を総額だけ見ているのではなく、賃金項目を個別に細かく分析しています。

「有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である」

今回の判決では、定年前と再雇用後では基本給の体系に違いがあるということと、再雇用後は賞与が支払われないこと、再雇用後は役付手当・家族手当・住宅手当・精勤手当が支払われなくなったということが争点となりました。

この点、基本給に関しては、定年前と再雇用後で体系が変わっているものの、そこには合理性が認められ合法であるとされました。賞与に関しても、定年退職時に退職金が支払われることや、年金を受給することが予定されていることを踏まえ、再雇用者に賞与を支払わないことは合法とされました。

ただし、諸手当については判断が分かれました。

まず、役職手当に関しては、正社員の中から指定された役付者に対して支払われる性質のものであり、再雇用後に支払われないことは合法とされました。

また、住宅手当や家族手当に関しても、福利厚生を主目的とした手当であり、マイホーム取得や扶養家族の生活費、子女の教育費などで負担が重いと考えられる現役世代を支援するために支払われる手当であることを勘案し、正社員に限って住宅手当や家族手当を支払うことを最高裁は適法であるとしました。

一方で、精勤手当に関しては、最高裁は次のように判示して、再雇用者にも正社員と同等に支払われなければならないとしました。

「正社員との職務の内容が同一である以上、両者の間で、その皆勤を奨励する必要性に相違はないというべきである」

すなわち、再雇用後も正社員と同等の業務を行っている場合、当該職務に直結するような手当を再雇用後に不支給だった場合は、違法となる可能性が高いということです。今回の最高裁の判決は、社会通念や、企業の一般的な実務の実態にも大きくは矛盾しません。しかしながら、「最高裁は再雇用者の賃金低下を無条件に容認した」と結論づけることもできない点は、労働者の立場でも、あるいは使用者側の立場でも覚えておいても損はないでしょう。

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