定年後再雇用の給料、2割減は当たり前なのか 最高裁の判断から合法的なラインを探る

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まず「広く行われており」のキーワードから読み取ることができるのは、最高裁は、再雇用後に同一労働内容であっても賃金が下がることは社会通念上も広く容認されていることなので、形式的に同一労働同一賃金を当てはめることに合理性がないと判断したということです。

ただし、裏を返せば、社会通念に照らし合わせて容認されないほどの大幅な賃金の低下は許されない、ということも最高裁は述べています。今後高齢者の就労がさらに進み、社会通念において「定年前後で職務や職責が同じならば、再雇用後も賃金は同一であるべき」という声が大多数になった場合は、最高裁の判断が変わる可能性は否定できません。

今回の判決が当面の指針となることは間違いありませんが、未来永劫にわたって絶対的でもないと見ていいでしょう。

次に「努力」というキーワードです。ここからは、最高裁は「定年前後の賃金格差を縮める努力を企業がどれくらい行ったのか」という「プロセス」も重視していることが読み取れます。

より具体的に言えば、本判決の事実認定において、最高裁は、企業側が再雇用後の賃金格差をなるべく小さくしようと努力をしていたことを認定し、その努力を評価したうえで、それでも生じてしまった格差はやむをえないと判断しています。

すなわち、再雇用後の賃金の低下幅が同じくらいであったとしても、企業側の経営努力が認められる場合と、再雇用者だからという理由だけで漫然と賃金をカットされた場合では、裁判所の判断は変わってくる可能性が高いということです。

定年後の再雇用で賃金が下がる場合は、企業側はその低下幅をなるべく小さくする努力が必要ですし、その理由は客観的に示されなければなりません。

定量的な判断を最高裁が示した

最後に「2割前後」というキーワードです。企業が努力をした結果生じた賃金格差であれば、少なくとも2割前後の低下までは容認される可能性が高いという、定量的な判断を最高裁が示したと読み取ることができます。

この点においては、雇用保険法の「高年齢用継続給付」という制度が参考になると思います。

「高年齢用継続給付」は、雇用保険の被保険者期間が一定以上ある定年退職者の再雇用後の賃金が定年前の賃金の75%未満に低下した場合、低下幅の一定部分が雇用保険から補填され、61%未満に低下したとき、補填幅が最大になるように制度設計されています。

このような形で設計された公的制度があることを踏まえ、国は、再雇用後の労働者の賃金が定年前の6割程度までは低下する可能性があることを容認しているとも推測されます。

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