『派遣社員から正社員になるコツはありますか?』(29歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談
<城繁幸氏の診断>
診断:『正社員職歴の重要性』
降って沸いたような新卒の売り手市場は過熱する一方で、今年の新卒求人倍率は2.14倍に達しました。好況と団塊定年と少子化の3つが理由ですね。そういう意味では、多少景気が変動したところで、長期的に売り手市場は変わらないでしょう。
その一方で、報われないのは就職氷河期世代です。特に2001年度卒業者なんて、新卒求人倍率が1.0を割っていましたから、普通に就職活動をやっていても、なかなか希望通りの就職ができなかったはずです。
もっとも、そんなことは、雇用が厳しく守られている国であればありふれた話。実際、フランスのように、新卒ですぐに正社員になれる人間のほうが少ない国もあるほどです。
ただ、ここ日本は、世界でも他に類を見ない年功序列制度がスタンダードの国です。寄り道した人は、その分、賃金が割高になってしまいます。つまり、一度レールから外れてしまった人間には、とことん冷たいカルチャーが存在しているわけです。
これが職務給(こっちが世界標準)だと、賃金は本人の能力で決まりますから、5、6年歳を食っていても、どうということはありません。卒業してバックパッカーしたり、また大学に戻って学び直したりする人間なんて、海外では珍しくもありません。20歳前後の人間しかキャンパスにいない日本のほうが、異常なんですね。
日本も、今後は間違いなくそういった方向に変わっていくはずです。ただ、それにはとても長い時間がかかるでしょう。今を生きる人間は、できる範囲の努力で人生を切り開く以外にありません。
それでは、一度レールから外れてしまった人間が、正社員として就職するには、どのようなアプローチがあるのでしょうか。
それはずばり、まずはどこでもいいから、一回正社員になることです。
1 中小企業を狙う
バブル以前から、中小企業は常に人材採用に苦労しています。そのため、人材の多様性という点では、逆に大企業などよりはるかに先を進んでいます。女性や中高年、そして非正規雇用労働者に対しても、柔軟に対応する企業が少なくありません。
2 職務給カルチャーを持つベンチャー、外資系企業を狙う
こういった企業はそもそも年齢給自体存在しないケースが多く、何年回り道していようが、その人がこなせる仕事に応じて処遇を決めてくれます。非正規雇用だろうが職歴1年未満だろうが、本人の出す結果次第なんですね。当然、チャンスは通常の日本企業などよりぐっと増えるはずです。
まずは、上記のようなキャリアを経由し、正社員としての職歴を手にすることです。契約社員でも十分です。そこで3年程度働けば、その後は日本中のほとんどの企業に、分け隔てなく応募することが可能となるでしょう。