超高齢化時代は「共同体メカニズム」が重要だ 行動経済学者が考える新時代のリーダー論

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日本大学アメリカンフットボール部の悪質なタックル問題で、関東学生アメリカンフットボール連盟の規律委員会が5月29日に発表した事実認定によると、内田正人前監督は君臨型リーダーであったことがうかがわれる。

2017年の全日本大学アメリカンフットボール選手権大会での優勝のように、君臨型リーダーシップが共同体に大きな成果をもたらすこともあるが、大きな危険性は君臨型リーダーの圧力により個人が犠牲になることである。

多様な個人を大切にしない集団主義が通用する社会では、個人が犠牲になっても大きく問題視されることはなかった。ハラスメントによる個人の犠牲に敏感になった現代の社会では、君臨型リーダーシップの危険性を見過ごすことができなくなってきている。

待望される日本のサーバント・リーダーたち

今後、日本のさまざまな分野と共同体で多くのサーバント・リーダーたちが輩出すれば、少子高齢化のニーズに応じる弱者と個人の多様性を大切にする、健全な共同体メカニズムが発展していくことになろう。サーバント・リーダーの重要な役割は、自分に取って代わることのできる多くのリーダーを育てていくことである。

今の日本は、少子高齢化による認知症高齢者や介護・医療費用の増加、それに伴う国家財政危機の可能性、大規模な天災や人災の増加など危機の時代である。

しかし同時に、われわれ一人ひとりが今の時代に必要なリーダーを注意深く選び、同時に、周りの人々に何らかのよい影響力を及ぼすリーダーシップを心掛けるなら、サーバント・リーダーたちが影響力を発揮する会社や学校や機関が大きく発展していき、同様な危機に直面するほかの国々の模範となれるチャンスの時だと考える。

大垣 昌夫 慶應義塾大学経済学部教授

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おおがき まさお / Masao Ogaki

1958年生まれ。大阪大学卒業。アメリカ・シカゴ大学経済学部博士課程修了(Ph.D.)。アメリカ・ロチェスター大学助教授、アメリカ・オハイオ州立大学教授等を経て、2009年から現職。2015年から2017年まで行動経済学会会長。著書に『行動経済学ー伝統的経済学との統合による新しい経済学を目指して』2014年(有斐閣、共著)など。学術論文をThe American Economic Review, Econometrica, International Economic Review, The Japanese Economic Review, Journal of Political Economy, The Review of Economic Studiesなどに多数発表。

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