超高齢化時代は「共同体メカニズム」が重要だ

行動経済学者が考える新時代のリーダー論

日本の場合も、戦前の共同体が高度成長期に市場メカニズムが強化されるにつれて弱体化したので、元に戻ることは困難だろうし、個人の多様性が大切にされなかった共同体への回帰が望ましいとも思えない。誰でも認知症を発症するなど弱者になる可能性があるだけに、戦前に比べて、日本でさまざまな弱者や価値観が大切にされるようになったのは、重要な進歩であると思える。

共同体のカギは、リーダーシップにある。リーダーシップは、さまざまに定義されているが、ここではリーダーシップ論の権威であるジョン・C・マクスウェルの「リーダーシップとは影響力である」という定義を使いたい。地位があっても影響力のない人もいるし、地位がなくても影響力のある人もいるので、特に共同体の内部で影響力のある人たちをリーダーとする定義である。

個人を尊重する共同体のリーダーとは?

多様性を大切にする共同体を立ち上げて成長させていくリーダーシップとして、サーバント・リーダーシップがある。これは「俺についてこい」というような君臨型のリーダーシップと異なり、リーダーが共同体のビジョンを明確にしつつ、メンバーがビジョンに貢献できるように奉仕する奉仕型のリーダーシップである。

たとえば、スターバックス・インターナショナル元社長のハワード・ビーハーは、著書『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』(日本経済新聞出版社)で「スターバックスの同僚たちにロバート・グリーンリーフの著した『サーバントリーダー』という小冊子を読むことを強く勧めている。すべての人に尽くす人間こそが最も有能なリーダーであるという考えをもとに書かれたエッセイだ」と語っている。

ビーハーが勧める1969年に書かれたエッセイで、グリーンリーフはサーバントとしてのリーダーという発想をヘルマン・ヘッセの『東方巡礼』という小説から得たことを述べている。

興味深いことに、聖書にはイエスがマタイの福音書25章25-27節で「あなたがたも知っているとおり、異邦人の支配者たちは人々に対して横柄にふるまい、偉い人たちは人々の上に権力をふるっています。そうであってはなりません。あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、皆に仕える者になりなさい。」(新改訳2017、新日本聖書刊行会)と、サーバント・リーダーの概念を明確に語っている。

それにもかかわらず、キリスト教が強い影響力を持った英語圏で、サーバント・リーダーという言葉が造られたのが20世紀も半ばを過ぎてからで、しかもヘルマン・ヘッセという、ヒンズー教や仏教などにも通じたキリスト教徒による小説からのインスピレーションであったことは注目に値する。サーバント・リーダーシップは、英語圏や西洋文化での直感的なリーダーシップ観とは合わず、むしろ、東洋的なリーダーシップ観と相性がよいと思われる。

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