住友重機、220億円M&Aで「脱・重厚長大」なるか 産業ロボットの本場・欧州で橋頭堡築く

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買収の狙いは住重のギアとラファート社のモーターを組み合わせたギア一体型モーターの製造開発だ。欧州メーカーと組んだのは、「ロボットの位置決め技術などで欧州が最も進んでいるから。欧州での存在感を高めるために、ラファート社の顧客基盤に期待している。ただ単にくっつけるだけではない。ラファート社のカスタマイゼーションの強さと住重の技術とがうまく融合して新しい価値を提供できるようにしたい」(田中専務)。

ラファート社と組むことで、ロボットの位置決め製品のほか、搬送物流や食品飲料機械のオートメーション化、風力発電などでの活用が見込めるという。

「PTCの成長の絵を描くうえでサーボ技術が必要だった。欧州で高い技術を持つのがラファート社。昨年後半にこちらからアプローチした」(田中専務)。サーボモーターと聞くと脳裏に浮かぶのが日本電産だが、「日本電産とはギアでがっぷり競合しているので、当社が組むことはありえない」(同)。

「海外で成長」で一枚岩に

約1年前にPTCグローバル本部長に就任したショーン・ディーン執行役員は、「住重の経営陣は『今後の成長のかなりの部分は海外からだ』という認識で一枚岩になっている。21年間、住重グループにいるが、ここ2年の変化は大きく、加速度的だ」と解説した。

「ラファート社はこれまで同族経営だったので他社に買収されることに不安を持ちがちだが、住重は長期的視野に立って投資をしてきた。私も異なる企業文化との融合を長年、手掛けてきた」。ディーン氏はそうも語り、PMI(買収後の経営統合)に自信をのぞかせた。

ラファート社の純資産は40億円弱と買収金額の2割弱にすぎず、会計上ののれんが発生する。のれんの総額や毎期の償却額(利益にマイナス)は今後決めるが、のれん償却の発生で営業利益への影響はトントン程度になりそうだという。

つまり、買収の狙いは業績貢献よりも欧州での存在感拡大にある。PTC事業全体の活性化につなげることはできるか。買収の規模はそれほど大きくないが、今後の住重の方向性を見定める試金石となりそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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