籠池氏を焚きつけかねないメディアの無思慮 トリックスターは、もうたくさんだ

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さらに籠池氏は、勾留中に読んだという「貞観政要」まで持ち出した。

貞観政要は唐の太宗の時代に編纂された帝王学のための書で、理想とされた「貞観の治」を実現した奥義が書かれている。籠池氏が引用したのは、「君子たる者はまず、百姓に存すべし」というフレーズ。これは「治者が行うべきことは、何よりも人民を大事に思い、恩恵を施さなくてはならない」という意味である。要するに「安倍首相はそうではない」と言いたいわけだ。

昭恵夫人が秘書に条件交渉を指示したのか

もっとも、籠池氏が強く主張したかったのは「国会の証人喚問で自分が述べたことに間違いはない」ということだろう。焦点は、昭恵夫人が土地取引などに「関与」していたのかどうか。「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という発言があったため、安倍首相の政治生命にも影響を与える。

籠池氏は2017年3月23日の参議院予算委員会で、次のように証言している。

「土地の買い上げの条件として10年だったものをもっと長い時間へ、期間へ変更できないかとの思いから、私たちの教育理念に賛同している昭恵夫人に助けをいただこうと考えまして、昭恵夫人の携帯に電話をいたしました。平成27年の10月のことです。留守電でしたので、メッセージを残しました」

「すると、後日、内閣総理大臣夫人付きの谷査恵子さんという方から御連絡をいただき、なかなか難しいとのお返事をいただきました。平成27年11月17日に総理夫人付き谷査恵子さんからいただいたファクスでは、大変恐縮ながら現状では希望に沿うことはできない、なお、本件は昭恵夫人にも既に報告させていただいておりますというお言葉をいただきました」

籠池氏のこの証言では、小学校建設用地の取得についてより有利な条件になるようにという籠池氏の要請に応じて、昭恵夫人が動いたということになる。これがもし虚偽の陳述なら、議院証言法により罰せられることになるが、いまだ籠池氏に対する刑事告発は行われていない。

その一方で、財務省が5月23日に国会に提出した近畿財務局の交渉記録の記載に関する質問には、籠池氏も諄子夫人も消極的だった。

交渉記録には諄子夫人が近畿財務局の職員にコースターを投げつけたり、「嘘つき、お前なんか信用できない。帰れ」「あんただけではなく、孫の代までたたられるで(罵詈雑言)」など人間性を疑うような暴言を吐いたことがわかる記載がある。

実際にその態度は近畿財務局の職員の心証を非常に悪くしたようで、わざわざ「担当者心証」として「国の対応の非難及び自己の主張の妥当性を一方的に述べるのみであり、今後も、当方指示に真摯に対応することは期待し難いという印象」という記載まである。

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