1ドル=113円までドル高円安が進む可能性 現在の日銀の金融政策には大きな不満

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しかし、米国10年金利の3.00%前後の水準は今後定着しそうだ。その背景にあるのは米国経済の高成長によるインフレ率上昇であり、年後半まで続くとみる。であればトランプ政権にとって、ドル安よりもドル高のほうが望ましいという見方が強まる可能性もある。ドル円相場は1ドル=110円台で推移、つまり(1)のシナリオの可能性がやや大きいとみている。

こうしたドル円相場への見解は、米国側の要因を重視した見方である。一方、日本側の要因はドル円に影響するだろうか。現段階では日本の経済政策や政治動向が、当面のドル円相場に影響する可能性は低くなったと考える。

円高修正でも、日銀の金融政策には疑念

また、4月までのコラムでは、2期目を迎えた黒田東彦日本銀行総裁のもとで行われる金融政策会合が、円高修正をもたらす可能性を指摘していた。実際、3月までは市場の一部では2018年末までの早期に10年国債金利の誘導水準引上げシナリオが浮上していた。しかしその後の円高進行や黒田総裁が出口政策に距離があることを繰り返し述べたことなどで日本銀行による早期利上げ開始への思惑は薄らいだ。これも、4月以降の円高修正の一因になったかもしれない。

一方で4月26、27日の新任副総裁2名が加わった金融政策決定会合をうけて、筆者は日本銀行への疑念を感じざるをえなかった。周知のように、展望レポートで、2%インフレの達成時期に関する文言が削除されたことに関係する。期限を定めインフレ目標実現を目指すフレームワークは日本銀行だけが採用していたが、これが完全に取り下げられた。インフレ目標の期限を定めることにはメリットとデメリットがあるが、日本銀行はデメリット(目標が実現できないことによる信認低下)が大きいと判断したとみられる。

しかし、上記の文言修正を行う一方で、決定会合後に黒田総裁が「(2%インフレについて)できるだけ早期に実現することを目指す」と述べるなど、日本銀行の政策姿勢はわかりにくい。また、前回のコラム「日本が緊縮財政の呪縛から解放されるには?」でも述べたが、筆者は、2016年9月に導入されたイールドカーブコントロールを通じた金融緩和効果が、最近低下していると懸念している。現行の政策の継続だけでは、積極的に2%インフレ実現を目指すことにならないのではないだろうか。

実際のところ、2%インフレ達成時期に関する文言の削除は、その実現可能性が低下したことを根拠に追加金融緩和を主張する審議委員の意見を封じ込めることが、主導したメンバーらの主な動機だったのかもしれない。現在の日本銀行は、粘り強く(ネガティブに言えば漫然と)、現行の金融政策を継続する姿勢をかたくなに強めているように見える。

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