日本企業と次々クロスライセンス、マイクロソフトが電機業界に触手

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締結先の日本企業の狙いも、ほぼマイクロソフトと一致している。ある精密企業の知財担当者は打ち明ける。「今時点で、マイクロソフトの保有特許をすぐに使う必要があるわけではない。ただ、今後の開発でバッティングする可能性もあるだろう。いい機会だと考え誘いに乗った」。

多くの企業が「過去にマイクロソフトの特許を使ったことはない」と口をそろえる。しかし、急速に増えているマイクロソフトの特許登録件数を考慮し、結んでおいたほうが係争リスクを軽減できると考えているようだ。

危機感募らせる大手電機メーカー

「マイクロソフトと手を組んだ連中はどこまでしっかり知財戦略を考えているのか。必要に応じて個別特許のライセンス契約を結べば済む話だ」--。ある大手電機メーカー首脳はクロスライセンス契約ラッシュを冷ややかに見る。マイクロソフトからの申し出を拒否した代表的企業はパナソニック、ソニー、キヤノン、三菱電機。これらの会社が警戒する理由は、係争を回避しながら日本の電機メーカーが得意とする事業領域へ進出しようとするマイクロソフトの意図が見えるためだ。

マイクロソフトの特許戦略に詳しい青山学院大学法学部の菊池純一教授は、マイクロソフトと締結先14社の保有特許を分析した。それによると、カーナビメーカーなど、保有特許の分布領域がマイクロソフトと大きく離れている会社も多いという。「領域が離れていれば、侵害リスクは少ない。もっと別の目的、つまり新しいビジネス領域に進出するための契約だろう」(菊池教授)。

確かに、マイクロソフトはパソコン用OSにおける圧倒的なシェアを武器に、携帯電話端末をはじめ、日本企業が得意とするテレビ、カーナビなどに搭載する基幹ソフトを提供することで、「ウィンドウズ・ワールド」の拡大を目指している。この分野では、グーグルなど他の企業が勢力拡大を目指していることもあり、苦戦しているのが実情だ。

クロスライセンス契約を結び“仲間”を増やすことで障害を取り除き、スムーズにさまざまな機器にウィンドウズを浸透させたい--これがマイクロソフトの本音だろう。では、マイクロソフトのこの戦略が成功したあとの家電業界はどうなるのか。結局、パソコンと同じことが繰り返され付加価値はソフトに集約。テレビやカーナビも「ウィンドウズがなければただのハコ」という事態になるのかもしれない。


(週刊東洋経済)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プランに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。14年7月から18年11月まで東洋経済オンライン編集長。19年1月から20年9月まで編集局次長週刊東洋経済編集長。20年10月から会社四季報センター長。25年3月から東洋経済総編集長。00年に唯一の著書『稀代の勝負師 孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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