「勉強熱」がハンパない中国人の凄まじい実態 歌番組より勉強番組が人気という過熱ぶり
私は以前、こちらの記事(「稲盛和夫にハマる中国人が抱える『深い悩み』」)で中国の盛和塾を取り上げたことがあったが、今回参加した「未来商習院」の存在を知ったのは昨年末。在日中国人社長から同ビジネススクールの学院長である馮晞氏を紹介されたことがきっかけだった。
中国のビジネススクールというと、日本のメディアではジャック・マー(馬雲)氏などが学んだ長江商習院の存在が知られている。公式なデータはないが、今、中国のビジネススクールは大小合わせて全国に1000カ所以上もあるといわれており、2015年10月に設立された未来商習院もそのひとつ。
中国企業の零点有数集団が国内外のパートナー企業と共同で設立したもので、ウェブサイトには「展望的思考、創造的思考、系統的思考、批判的思考、転覆的思考を重んじ、中国の未来を担う企業家を養成する」とある。MBA(経営学修士)などを取得する大学系スクールではなく、受講生の学びや成長に重点を置く独立系ビジネススクールだ。
1年に4回、北京や上海、西安など開催場所や趣向を変えて3日間、朝から晩まで集中講座を開くスタイルで、これまでに海外企業(ドイツやイスラエル)の視察なども行ってきた。講師は同スクールの経営陣である袁岳氏や馮晞氏をはじめ、中国やアメリカの各界で活躍する著名な研究者や経営者、思想家、哲学者、芸術家などを招聘している。
ビジネスに直結する実用的な講座というよりも、世の中の動きを理解できる大局的な教養講座や、芸術(書道、音楽、アート)に関する講座も設置されていることが特徴だ。私が参加した4月は、「ビッグデータを用いた未来の経済分析」や「未来のエネルギー」といったタイトルの講座が開かれていた。ほかにヒーリング音楽を聴いたり、美術館見学などを行う時間もあった。
講座の費用は、2年間で350万円
同スクールの受講料は2年間で20万元(約350万円)。欧米のビジネススクールに比べたら安いといえるが、移動日も含めて4日以上も仕事を休み、広大な中国でわざわざ地方都市で開かれる講座にまで足を運ぶのは、受講生に強いモチベーションがあるからだろう。彼らは何を求めて学びに行くのだろうか。
参加者の一人、王琪氏(48)はこの講座に参加して今年で3年目。ドイツ系投資会社の上海代表を務め、頻繁にドイツに出張するなど多忙なビジネスウーマンだが、「とにかく講座の内容が面白いのです。自分の知らないことを知ることができる喜びはもちろんありますが、これからどんなふうに自分のビジネスを進めていったらいいのか、自分にはどんな可能性があるのか、いろいろな話を聞いていくうちに、冷静に頭の中を整理できるようなヒントがたくさん浮かんできます。仲間との出会いも大事。このスクールで築いたネットワークはかけがえのないものです」と語る。
東京からも中国人経営者、徐維氏(36)が参加していた。徐氏は京都大学に留学後、2011年に日本で起業。日本の化粧品などを中国に販売する越境ECを手掛ける「京未来」を立ち上げて軌道に乗せたが、仕事上の悩みは尽きないという。東京に住んでいるが、中国とのビジネスなので、中国の刻々と変化する状況も理解する必要がある。変化の少ない日本と比べ、中国の変化はあまりにも激しすぎ、そのスピードについていくことは至難の業だ。そんなことを考えていたとき、著名な経営者であり、同スクールの経営陣の一人である袁岳氏と飛行機で偶然知り合い、このスクールに参加したという。
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