出産後、夫婦の「所得差」が2倍になる理不尽 米国も日本と似たようなものだった

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所得の低い層は、全般的に所得格差が小さい。また、30代後半に出産した層は、子どもを1人しか持たない場合が多いために、夫婦間の所得格差も比較的小さいということが考えられる。しかし、両グループが夫との収入格差を回復しているという事実は、その職業にかかわらず、主要なキャリア形成期以外に子どもを産むことに、何か特別な点があることを示唆している。

一つの説明として挙げられるのは、現代の経済ではオフィスで仕事をし、長時間、柔軟性のない働き方をしなければならないが、所得格差が最小となるのは、仕事をする場所と時間に関して、ある程度のコントロールがきく場合だということだ。

妻は夫の倍育児に時間を使っている

この問題は一般的に、時間の問題に行き着くことが多い。子どもの世話には、特に学校に入る前には、多くの時間が必要だ。そして、母親は父親と比べると、子どもの世話やそれに関連することに、不均衡に多くの時間を使っている。

この点は、キャリアの形成途中で、最も懸命に働いて自分の力を示さなければならない女性たちにとっては、特に問題となると思われる。一方で、ある程度の年功を積んだ女性や、まだキャリアをスタートさせていない女性にとっては、キャリア形成期の女性ほどには問題とならないと考えられる。

女性は家族の世話をするために、労働時間を減らしたり、休暇をとったり、昇進を断ったり、仕事を辞めたりする傾向がある。夫婦ともにフルタイムで働いている家庭でも、夫と比べると妻のほうが、家事や育児にほぼ倍の時間を使っている。そして、女性の労働時間が減ると取得は不釣り合いに低くなり、昇給や昇進の可能性も低くなる。

「男女の所得格差が本当に広がるのは、子どもが誕生したときだ」と、国勢調査局のシニア・エコノミストで、この研究論文の著者であるダニエル・H・サンドラーは言う。

今回の研究では、子どもの誕生前は女性の所得は男性より1万2600ドル少ないが、子どもが生まれた後は2万5100ドル少なくなることが示された。研究の対象となったのは、1978年から2011年までのあいだに子どもが生まれた異性どうしの夫婦で、社会保険庁の所得記録と、国勢調査局の所得および社会保障受給調査のデータを用いて分析が行われた。妻が第1子誕生の2年前に仕事をしていた夫婦が対象で、その後の労働時間の変化は問わなかった。

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