カルビー、ついに迎えた「フルグラ」の踊り場 ポテチショック、松本会長退任の次の正念場

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一方で、フルグラの成長は海外市場にも懸かっている。特に重要視されるのが中国だ。

中国でもフルグラ人気は高い。カルビーが正式に輸出をしていなかった2017年の時点で、日本で買い付けたフルグラを現地で高値転売する業者が存在していたほどだ。だが同年3月に中国のテレビ番組で「輸入禁止地域から輸入されている」と名指しで批判を受け、中国での消費が激減した経緯がある。

正式に輸出を開始するために、新たに北海道と京都に新工場を設立。「観光地として人気が高い土地を生産地としてアピールするため」(海外特命事項担当の駒田勝・執行役員)だ。2017年8月の北海道工場の稼働と同時期に、アリババが運営する越境EC(ネット通販)サイト「天猫国際(Tmall Global)」での販売を開始。現在北海道工場で製造されたフルグラは全量、中国に輸出されている。

2018年からは現地法人を立ち上げて中国内のECにも本格参入。さらに現地のスーパーなどリアルの店舗でも展開を開始している。

こうした取り組みで、今2018年3月期のフルグラの海外事業売上高は前期比1.4倍の78億円超と急成長を見込んでいる。

試される伊藤社長の手腕

6月の定時株主総会では、9年間会長として経営を主導してきた松本会長が退任し、伊藤秀二社長兼COO(最高執行責任者)との二頭体制が終わる。6月からCEOになる伊藤社長は決算会見の席上で、「これまで2人でやってきた仕事を1人でやるようになるのは大変なこと」と語った。

松本晃氏退任の後、CEOへの昇格が決まった伊藤秀二社長兼COO(記者撮影)

伊藤社長が今後の取り組みの中で強調したのは、国内スナック市場のテコ入れだった。「この5年間、カルビーはシェアを取っていただけでスナック市場自体は伸びていなかった。今後は市場を成長させていかなければいけない」(伊藤社長)。

これまで大容量のスナック菓子を手にとってこなかった単身者や若い女性向けに小容量の個食スナックのラインナップを強化、新しい市場を開拓していくという。海外事業の成長と国内スナック市場拡大を両輪で進めて行きたい考えだ。

松本会長がまいた種を芽吹かせ、国内外ともに成長軌道を維持できるか。フルグラが踊り場にさしかかる今、伊藤社長の正念場が訪れている。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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