「TX」次々繰り出す対策でトラブル減らせるか つくばエクスプレス20秒早発は大問題だった

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今回のシミュレーター導入により、異常時訓練の機会が増える。全127人の運転士を対象に1日4人ずつ訓練を行う計画だ。1人当たり年6回受講できるという。「異常時の対応能力をさらに高めたい」と、担当者は意気込む。確かにこうした訓練を重ねることで、異常に即した臨機応変の対応が取れるようになるだろう。

売上高は大手私鉄並みの規模になったTX。だが、社内体制や社員の安全意識に課題がある(撮影:大澤 誠)

しかし、現在のTXにはより切迫した課題がある。異常時よりもむしろ通常運行時、つまり日常の基本動作にしばしば不備が発生している。本来の停止位置を大幅に超過して停止するオーバーラン、終着駅の誤認といった運転士のうっかりミスが過去に何度も繰り返されている(『なぜ「TX」でトラブルや不祥事が相次ぐのか』)。ケガ人が出るような事態には至っていないが、見過ごせないものばかりだ。

2017年11月14日には南流山駅で普通列車が定刻よりも約20秒早発するというトラブルが起きた。列車の遅延はしばしば起きる。その理由は悪天候や混雑によるダイヤ乱れ、車両故障などさまざまだ。では列車の早発はなぜ起きるのか。TXの運転士はなぜ20秒早く発車したのだろうか。その理由を突き詰めていくと、TXが抱えている問題点が浮かび上がる。

JR西日本は「ミスでも懲戒せず」

運転シミュレーターの運用開始から2日後の4月25日、JR福知山線脱線事故の遺族らが主催する「追悼と安全のつどい」が、兵庫県尼崎市内で3年ぶりに開催された。13年前の2005年4月25日に起きたこの事故は、乗客と運転士を合わせ107人が死亡、562人が負傷した。

4月25日、JR福知山線脱線事故の遺族らの主催で「追悼と安全のつどい」が開かれた(記者撮影)

「二度と同じ事故を繰り返さないためには、その原因を根本まで掘り下げて徹底的に対策を講じることが必要だ」という遺族の願いから、JR西日本(西日本旅客鉄道)と遺族が有識者を交えて、同社がこれまで行ってきた再発防止の取り組みについて議論を交わした。

JR史上最悪となった脱線事故の直接的な原因は、運転士が制限時速70kmを大幅に超える時速116kmでカーブ区間に進入し、カーブを曲がり切れなかったことだ。背景には、事故直前に起きたオーバーランにより懲罰的な「日勤教育」を受けることを恐れた運転士が、遅れを取り戻すため制限速度を超えて運転したという事情があったとされる。

事故への反省から、JR西日本はヒューマンエラーに対して懲戒や人事上のマイナス評価を行わないこととした。むしろ乗務員にヒューマンエラーを積極的に報告させ、エラーに至ったプロセスを分析し、対策を講じるという方策に切り替えたのだ。「ヒューマンエラーは結果であり、原因ではない」とJR西日本の緒方文人副社長は壇上で発言した。

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