セイコーは非情?被災店切り捨て炎上の内幕 熊本の老舗は、なぜ告発ツイートをしたのか

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そのため、高級腕時計を扱う小売店は正規販売店として多くの高級ブランドを取り扱いたい、と考える。しかし、各メーカーにとって重要なのは「売る力」だ。

各メーカーはいつまでも同じモデルを売るわけではなく、モデルの入れ替えを定期的に行う。一定の販売量が確保できていない小売店は、モデルチェンジのたびに旧モデルの在庫を抱えることになる。

これは販売店のリスクと思われがちだが、メーカーにとっても安売り店への流出リスクを高めることにつながる。十分なマージンがあるため、小売店は在庫処分をしたとしても元が取れてしまうのだ。メーカーが約束した販売量を確保できない小売店との取引を打ち切ろうとするのは当然なのだ。

セイコーウオッチとしては、販売量が基準に達していないソフィ・タカヤナギとの取引を解除する必要があった。セイコーウオッチ社員が訪問したことを機に告発ツイートを削除したということは、高柳社長も納得したのだろう。

セイコーの企業イメージには手痛い傷

しかし、ソフィ・タカヤナギ側にも言い分はある。

現在、2つの店舗に分かれて営業をしている(画像:ソフィ・タカヤナギのHPより)

震災後、被災した旧店舗の在庫を処分することで売り上げの落ち込みをカバーしたものの、旧店舗の建物が全壊となり、その建て替えのため、2つの店舗に分かれざるをえなかった。2つの店に分かれながらも従業員を増やせず、売り場面積も縮小したことから、販売が落ち込んだという。

また在庫処分後、仮店舗出店費用や旧店舗の解体費用捻出など一時的な支出も重なり、十分な数の仕入れを行えない時期もあり、それによる売り上げへの影響もあったという。そうした中で今年11月にオープンする新店舗の稼働で盛り返すので認定取り消しを撤回してほしいというのが、ソフィ・タカヤナギの主張だった。

ところが、冒頭にも記したようにセイコーウオッチは7月からグランドセイコーなど他の製品も卸さないと通告したようだ。これによって高柳社長は怒りを爆発させた。メーカーとしての言い分はあるにしても、震災によって苦しんでいる小売店をバッサリと切ったドライな企業という印象を持たれるのは当然だろう。

今回の炎上案件から学ぶことがあるとすれば、「文書単独でネット上に公開されることも想定し、高圧的ととらえられかねない書き方は避けるべき」ということだ。今回の場合であれば、解除の必要性などについて簡単にでも触れておけば、一方的に相手に不利益を押し付けているような文面には見えなかっただろう。

いずれにしろ、セイコーウオッチはその企業イメージに手痛い傷を負ったことは間違いない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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