任天堂は「スイッチの次」を生み出せるのか 経営陣が世代交代、スマホゲームにも新展開

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スイッチの躍進により、足元の業績に大きな不安はない。実際、2018年度の会社業績予想は売上高1兆2000億円、営業利益2250億円と増収増益を見込む。4月20日には、スイッチと段ボール製のキットを組み立てて作る「トイコン」を組み合わせて遊ぶ周辺機器「ニンテンドーラボ」を発売した。ファミリー層の需要を掘り起こし、さらなる販売拡大を狙う。

ただ、任天堂据え置きゲーム機の製品サイクルは約5年。足元絶好調のスイッチも、いずれは製品としての寿命を迎える。現在の勢いを加速させつつ、今のうちから「スイッチの次」を見据えた事業展開が必要となる。

スマホゲームを収益柱に育てられるか

スイッチに並ぶ収益柱として期待されているのが、スマホゲーム分野だ。2015年3月にディー・エヌ・エー(DeNA)との提携を発表して以来、『スーパーマリオ ラン』や『ファイアーエムブレム ヒーローズ』といった新作タイトルを配信してきた。ただ、今のところはまだ収益柱と呼べるほどの規模に至っていない。「年間2~3タイトル」としてきた新作投入も、2017年度は『どうぶつの森 ポケットキャンプ』の1本にとどまった。

任天堂が2016年12月から展開しているスマホゲーム「スーパーマリオラン」(C)2016 Nintendo

そうした状況の中、社長交代発表の翌27日に発表されたのがサイバーエージェント傘下のゲーム会社、Cygames(サイゲームス)との提携だ。任天堂はサイゲームスに5%を出資し、今夏には第1弾となるスマホゲーム『ドラガリアロスト』を配信する。

これまで任天堂がDeNAと開発してきたタイトルは、『スーパーマリオ』をはじめとした既存の人気作品を活用したもの。それに対し、『ドラガリアロスト』は一から開発したオリジナルタイトルだ。スマホ分野の本格拡大に向け、新たな手を打った格好になる。

スマホ分野以外にも、発売から7年が経過している携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」の後継機の行方、映画やテーマパークといった非ゲーム分野へのIP(知的財産)展開など、取り組むべきテーマは山積する。

会見の終盤で古川氏は、「この業界は天国と地獄しかない。結局、任天堂が独創的なものを作れるかどうかに懸かっている。それができないと存在価値がない。この精神を実行して結果に結び付けることが大切だ」と思いを語った。強みの開発陣を束ね、“任天堂らしい”コンテンツを生み出す基盤を作ることが、新体制には求められる。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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