乗降客数からは見えない「新幹線駅」の明暗 速達列車打ち切りの駅や「道の駅」で沸く駅も

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木古内駅は新函館北斗駅よりも話題性で勝る(撮影:尾形文繁)

他方、木古内駅は近隣8町との連携や、町中心部に位置する在来線駅(現・第三セクター駅)への新幹線駅併設、駅前への「道の駅」新設などによって、北海道新幹線の「模範的活用事例」という評価が定まりつつある。

新幹線開業直前にオープンした「道の駅 みそぎの郷 きこない」は、開業後1年間で利用者が55万人に達するとともに、道内の道の駅満足度ランキングで初登場4位に選ばれるなど躍進が続く。さらにサービス向上に努めた結果、開業2年目は早くもランキング第1位に輝き、周囲もスタッフも驚きと喜びに包まれた。

道の駅利用者の多くは、地元住民や函館方面から周遊してきた人だと推測される。木古内駅の乗車人員数を考えると、同駅の利用者がどの程度、道の駅や町内の活況に寄与したかは見えにくい。とはいえ、道の駅新設や周辺整備は、新幹線開業を契機に構想され、入念な準備を経て実現したものだ。駅利用者は少なくとも、地元に新幹線効果が表れる例といえる。

新幹線開業によって得られる真の効果

列車ダイヤや乗降客数に、新幹線沿線の都市は一喜一憂しがちだ。しかし、新幹線開業によって得られる真の効果は、「瞬間的な利用者数増」ではない。地域のリソースをとことん使い、人口減少と高齢化に適合できるまちづくりを目指す。開業後、一定期間が過ぎてから見えてくる地域経営の姿にこそ、新幹線沿線の実力は表れてくる。

現に北陸新幹線では、各駅停車の「はくたか」しか止まらない上越妙高駅(2016年度1日平均乗車人員が約2100人)や、長野県の飯山駅(同約490人)で、刮目すべき動きがある。コンテナ商店街の誕生や県境を越えた異業種交流会など、人口減社会への適合を目指した動きが活発化しているのだ。

新幹線開業によって地域社会で起きる意識変革や地域経営力の変化こそが、地方都市の生き残りのカギを握る。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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