「国民党」旗揚げだが、「俺たちに明日はない」 再分裂を招き、国民の期待を裏切る形に

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衆院では、民進党の党籍を持つ議員らが結成した会派「無所属の会」の多くの議員が、新党不参加の意向を示している。民進党常任顧問で党内に一定の影響力を持つ岡田克也元副総理(元民進党代表)や野田佳彦元首相らの実力者が、「立憲民主抜きの合流では幅広い結集にはならない」と新党参加に慎重だからだ。さらに中川正春元文部科学相、江田憲司元代表代行も不参加の方向で、希望の党でも、細野豪志元環境相ら「結党メンバー」の保守系有力議員や、大串博志元復興大臣政務官らリベラル系議員が不参加を明言している。

一方、現在の参院の野党第1党は民進党だが、同党参院議員会長の小川敏夫元法相ら10人以上が新党不参加の意向とされ、現時点での新党参加予定議員は20人前後にとどまっている。しかも、小川氏らはいったん無所属になったうえで、立憲民主との統一会派や同党入党を視野に入れている。民進幹部も「民進議員の半数近くは、参院でも立憲を野党第1会派とすべきだと思っている」と漏らしており、10人前後の中間派の動向次第では、新党結成後に参院でも立憲民主党が野党第1党に躍り出る可能性は否定できない。

そもそも、大塚、玉木両代表が新党結成を目指したのは「衆参両院で野党第1党を押さえなければ、国会での政府与党との対決で存在感を発揮できない」(希望幹部)のが最大の動機とされる。民進幹部は参加議員数について「(衆参で)80人なら大成功だ。70人は超えたい」と述べたが、それでは2016年の民進党結党時の約半数にとどまる。

新党が結果的に野党第1党になれず、しかも、旧民主党政権での閣僚経験もあるベテラン議員の多くが新党不参加となれば、「民進系を再分裂させ、中規模の地味な野党をつくっただけ」(民進系有力議員)となり、「何のための新党か意味不明」(同)との批判も免れない。

一方、新党の基本政策についても新党協議会でのすり合わせの過程でさまざまな対立があった。焦点となった安全保障法制への対応では「違憲と指摘される部分を白紙撤回することを含め、必要な見直しを行う」で合意したが、「白紙撤回」という文言は安保法制に批判的な民進が、容認派の希望を押し切った結果とされる。

「民進党」から「国民党」で、台湾もびっくり

新党の名称も最後までもめた。当初は2009年に政権交代を成し遂げた「民主党」の復活を求める意見が多かったが、立憲民主党が「わが党の略称の『民主党』を使うのは公選法上も疑義がある」とクレームをつけ、党内からも「『帰ってきた民主党』では国民の支持を得られない」との疑問が出たため断念。結局、「国民」と「民主」を合体させた「国民民主党」に落ち着いた。

この略称の「国民党」を大きく取り上げたのが台湾メディアだ。台湾では、民主進歩党(略称「民進党」)と国民党が2大政党として政権を争ってきた。ところが日本では「民進党」が「国民党」に名称変更した格好だけに、主要メディアが「(国民党を率いた)孫文、蔣介石もあっけにとられている」と日本での「国民党」誕生を皮肉交じりに報じた。台湾では、2016年1月の総統選で当時野党だった民進党が国民党に圧勝し、政権交代を果たした。日本でも、その直後に民進党が誕生したが、現在は台湾の民進党の支持率が落ち込む一方で、国民党も低迷している。

「国民民主党」という新党の旗揚げについては、他党の反応も冷ややかだ。自民党の森山国対委員長は「こんなに早く新しい政党ということで国民の理解をいただけるのかなと、政治の劣化につながることはないのかなと心配する」と指摘した。また、「野党大結集」が持論の小沢一郎自由党代表は「民進と希望だけの合併では国民の支持は得られない」とこちらも安易な新党結成に疑問を呈した。

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