渡った先にエサがない渡り鳥が多発する理由 「生物季節のずれ」で命が危うい動植物5つ

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春の気温が高くなると、オークが芽を出す時期は早まり、場所によっては幼虫の「旬」も2週間ほど前倒しになる。だがヒタキは滞在先のアフリカでの昼の長さに基づいて出発のスケジュールを立てているらしく、エサが十分ある時期に欧州にたどり着けない例が多発しているのだ。

その後、オランダ国内でも特に幼虫の発生時期が早まった地域ではヒタキの数が急減していることも明らかになった。「生物季節のずれのせいで生息数が実際に変わった可能性を示す大きな発見だ」と、フローニンゲン大学の環境学者、クリスティアン・ボトは言う。

地面にひっそりと作られた巣が…

鳥とトラクターとの悲しい出会い

温暖化は、これまであった生物と生物の関係を断つだけではない。危険な「出会い」をもたらすこともある。

たとえばフィンランドでは春、種まきが終わった大麦畑でタゲリやダイシャクシギが地面に巣を作る。だが温暖化に従って近年、産卵時期が種まきの前へと早まってしまった。これでは地面にひっそりと作られた巣がトラクターなどの農業機械に壊されてしまう。

38年分のデータを分析したところ、温暖化を受けて種まきの時期は1週間ほど前倒しされていたが、産卵時期は2〜3週間も早まっていた。「これが生物季節のずれを生んでいる」と、サンタンジェリは言う。「これらの鳥の数の減少という結果につながるだろう」。

固く育った植物に泣くトナカイ

グリーランド西部に生息するトナカイの食べ物は季節によってまったく異なる。冬には沿岸部で地衣類を食べ、春から夏にかけては内陸部に移動して繁殖し、そこに生える寒帯植物を餌とする。

グリーンランドが温暖化の影響を受け、海氷が縮小する一方で、内陸部の寒帯植物が芽生える時期は早まっている。中には10年前と比べて26日も早まった種もある。だがトナカイが沿岸部から内陸に移動する時期はそれほど変わっていない。また、春の植物の生長がトナカイの出産シーズンより早く進んでしまった年には、小さいうちに死ぬトナカイの子が多いらしいという困った傾向が記録されている。

この研究では高い気温とトナカイの子の死亡数の関連しか明らかになっていないものの、「(生物季節の)ずれは困った問題を生むという見方を裏付ける結果だ」と言うのは、カリフォルニア大学デービス校のエリック・ポスト教授(環境学)だ。芽生えの時期が早ければ、トナカイがやってきて食べようとするころには寒帯植物は固くなり、栄養も乏しくなっているかもしれない。

ではなぜ、トナカイは移動を早めないのだろう。可能性の1つとして考えられるのが、トナカイの繁殖のサイクルが昼の長さといった季節を示すシグナルに強く結び付いているのに対し、植物は温度の上昇に強く反応するということだ。

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