佐々木:では、本はウェブに吸収されないでしょうか。電子書籍が出てきていますけれども。
塩野:吸収はされていっていると思います。日本では本はなくならないでしょうが、本を読む人がウェブを見ることに時間を取られていたり、ウェブの短い記事を何本も読んで満足してしまったりで、生活者として長文を読まなくなっている傾向が強まっている。
日本人は本をたくさん読む国民ですが、今後はより趣味性が高まっていくのではないでしょうか。本の匂いや長い作品を読むのが好きな人が、本を読むというふうに。
佐々木:そうすると、やっぱり雑誌がいちばん厳しいですね。新聞の宅配と違って、雑誌は定期購読もあまりないですし、その分、マーケットの影響も受けやすい。
塩野:対ウェブで考えると雑誌は本当に厳しい。
もし『週刊東洋経済』の編集長だったら
佐々木:では、たとえば塩野さんが『週刊東洋経済』の編集長だったら、もしくは東洋経済新報社の社長だったら、どういう手を打ちますか。
塩野:そうですねえ。各媒体にエッジは立たせるでしょう。たとえばマガジンハウスの『ブルータス』って、どんなテーマであろうが、ある程度の深掘りをしてオシャレにまとめてやるぜというコンセプトじゃないですか。それから阪急コミュニケーションズの『Pen』もそうです。ワンテーマで深く掘ると、読者はつきますよね。
佐々木:そうですね、確実に。
塩野:そういう媒体をいくつか作ります。やっぱり媒体としてのオピニオン、媒体としてのイデオロギーを強く打ち出す。
結局、それもスターなんですよ。誰々の責任編集というのも、『ブルータス』がやる特集だったらいいはずだというのも、どちらも任せて安心のスターということ。
やっぱりエッジを立たせることが重要です。たとえば「経済ニュースでいちばんエッジが立っています」とか、「社会面のニュースでいちばんエッジが立っています」とか。マスは取れないかもしれないですけどね。
『MONOCLE(モノクル)』(タイラー・ブリュレーが編集長を務めるグローバル情報誌)みたいな媒体を5つ作るとなったら、大変だとは思いますが、それぐらいエッジが立っていないと、ロイヤルティの高い人間からおカネを取るのは厳しいと思います。
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