ついに動く岸田氏、「ポスト安倍」が始まった 日米首脳会談と同時に新潮砲炸裂の修羅場で

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野党側は今回の訪米で首相がトランプ大統領とゴルフを行ったことにもクレームをつけた。首相は「腹を割って相当突っ込んだ話ができた」(側近)とゴルフ外交の効用を力説するが、野党側からは「違和感がある。国民の理解は得られない」(立憲民主幹部)などと批判の声が相次ぐ。さらに、首相訪米に昭恵夫人や柳瀬氏が同行していることについても「海外逃亡にも見える」(同)と批判した。

首相は17、18日での2回の首脳会談とゴルフで「日米の強い絆を再確認できた」と胸を張るが、与党内からは「折角の日米首脳会談も、国内のスキャンダルで台無しになった」(自民幹部)と嘆く声が聞こえてくる。首相周辺は「安倍外交の成果をアピールすれば、週末の世論調査でも内閣支持率がアップするはず」と期待するが、各メディアが首相訪米よりスキャンダル報道に力を入れているため、「支持率は続落するのでは」(自民幹部)との見方が広がる。

そうした中、永田町では18日夜に小泉純一郎元首相、山崎拓元自民党副総裁と小池百合子東京都知事が赤坂の日本料理店で会談したことで憶測が広がった。小泉氏は週刊誌のインタビューで「首相の3選は無理」などと語り、山崎氏もこれまで首相批判を続けてきた党長老だからだ。山崎氏は会談後、不祥事が相次ぐ安倍政権について「人心一新の時が来ている」との意見が出たことを明らかにした。

山崎氏は記者団に、公文書改ざん事件での佐川氏の辞任を「トカゲのしっぽ切り」、セクハラ疑惑での福田氏の辞任表明を「胴体切り」と表現し、「トカゲのキャップ(頭)も切らないといけない」と述べ、麻生財務相にも辞任を求める考えを示した。この会合には岸田派パーティーに出席した二階幹事長も遅れて駆けつけたが、出席者の話を聞くだけでほとんど発言はしなかったとされる。

「保守本流の政治を一日も早く」と古賀氏

18日の岸田派パーティ―でのあいさつで、岸田氏が「故池田勇人元首相が立ち上げたわが宏池会は結成61年目を迎え、新しいスタートを切る時だ」と切り出したのは、同派が創立60周年記念パーティーを丁度1年前の4月19日に同じホテルで開催したことが念頭にあったからだ。

昨年は「『安倍時代』もいつかは終わりが来る。宏池会はその時に何をしなければならないか、今から考えなければならない」と珍しくポスト安倍に意欲をにじませた岸田氏に対し、遅れて駆けつけた首相は「(首相を目指すのは)もうしばらく我慢して政権を支えて頂きたい」とけん制したが、会場は笑いに包まれた。しかし、今回の岸田氏の決意表明や、それを見守る各派幹部達の表情には期待や警戒感が交錯していた。

今年1月に死去した故野中広務元幹事長や二階幹事長と長年にわたって親交を結んできた岸田派名誉会長の古賀氏は、壇上に上がった出席議員を従えて乾杯の音頭をとった。「最高、最大のリベラルである宏池会の伝統をきっちりつないでいく」と切り出し、「保守本流の政治が一日も早く来るのを一日千秋の思いで待ち焦がれている」と言って杯を挙げた古賀氏は、段を降りる岸田氏の背後で会場を見やりながら「これから2カ月が勝負だ」とつぶやいた。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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