“自分の思いどおりにならなかったからといって腹を立ててものに当たる。こんな人と結婚していいのだろうか?”そうは思ったものの、正樹のことは好きだったし、彼が困っているときこそ支えてあげることが、真の夫婦の姿ではないか。そう思い直し、大阪出張は少し無理をしてでも、日帰りすることにした。
彼を驚かせようと携帯に電話をすると…
23時すぎに東京駅に着き、その足で正樹のマンションに向かおうとした。突然の訪問で驚かせようと、東京駅から彼の携帯に電話をかけた。電話に出た彼は、あきらかにうろたえていた。「かけなおすよ」と言い、数分後に電話がかかってきた。
「今日は、ゆかりが帰ってこないと思ったから家にいないんだ。今大学時代の友達の家で飲んでるんだよ。そいつの家に泊まるつもりで来ていたし、今夜はそっちに帰れない」
そのときだった。
「ちょっと何やってるの~」
電話の後ろから、女性の声がした。
「あっ」と言った瞬間に、正樹は電話を切ってしまった。
ゆかりは、私に言った。
「その後、また電話がかかってきて、『男も女もみんなで一緒に飲んでいる』って言うんですよ。でも、口調がしどろもどろ。男も女も一緒にいたというけれど、女性と2人きりだったかもしれない。いろいろなことに目をつむってきて、もう我慢の限界でした。というか、どうして私はそこまでして、結婚という形を整えたかったんだろうって。なんだか憑き物が落ちました。私から婚約解消を申し出ました」
とはいえ今になると、“本当に婚約を解消してよかったのか”“私に我慢が足りなかったんじゃないか”と思う夜もあり、涙が出てくることがあるそうだ。
どんな相手と結婚するか、そこに正解はない。幸せとは、自分で決めるものだし感じるものだが、このまま結婚して幸せだっただろうか?
私はゆかりに言った。
「婚約解消という道を選んだのなら、もう後ろは振り返らず、新しい出会いをどんどんしていきましょう」
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