Uber事故を米自動車技術会が語らない不思議

自動運転は企業間競争を最優先していいのか

ただ、今回のWCXでは開会のあいさつをしたSAE幹部、そしてキーノートスピーチをした米ゼネラル・モーターズ(GM)の幹部も、昨今の自動運転に関する重大事故についてはまったく触れなかった。筆者はSAEが「自動運転の在り方」を緊急の議題に挙げて、議論する場を設けるべきだと思っていたが、そうはならなかった。

2012年に策定された自動運転レベルのガイドラインでSAEは主導的な役割を果たし、その後の2016年9月には米運輸省道路交通安全局(NHTSA)がSAEの自動運転レベルを採用した。日本も含めて自動運転レベルはSAEの解釈が事実上の世界標準となっているほど、SAEは自動運転と深くかかわっている。

2018年4月10日、米デトロイトで開幕したWCX2018。初日朝のオープニングセレモニーの様子(筆者撮影)

筆者は、日本の自動車技術会(JSAE)の個人会員であり、またWCXを含めてSAEが世界各地で開催する学会やカンファレンスを定常的に取材している。そうした立場として、今回のWCXのオープニングで、SAEインターナショナル会長が、3月に自動運転に関連して起こった2つの重大事故に触れたうえで、SAEとして自動車産業界の変革に真剣に取り組むべきとの考えを示さなかったことには疑問を感じる。

自動運転の公道実験は事実上、穴だらけ

今回のWCXで併催された展示会で自動運転車での出展は、自動車メーカーではGMのみ、また仏ベンチャーのNAVYAが会場内で体験試乗を行っただけだった。

GMは2019年の実用化に向けて公道実験を行っている、EVのシボレー・ボルトをベースとした実験車両を公開した。自動運転レベル4での自動運転タクシーとしての事業化を考慮している。

キーノートスピーチでGM幹部は、この実験車両を180台製造する予定で、そのうち100台がすでに公道走行のためにナンバー登録されており、実験はカリフォルニア州サンフランシスコ、アリゾナ州フェニックス、そしてここミシガン州デトロイトで行うという。

また、筆者が同車両の実験に携わるGM関係者に直接話を聞いたところ、以下の回答を得たので箇条書きとする。

・公道実験はサンフランシスコをベースとしてGM専用開発拠点が主体で行っている
・GMとしての最新自動運転技術については、これまで約3年間の公道実験の実績がある
・GMがプレスリリースした、運転席にハンドルやペダルがない車両は、車内向けのコンセプトモデルとして存在するが、実験を行うための実車はまだ存在していない
・現時点では、公道実験はサンフランシスコのみ。特に都市部での走行が主体
・公道実験は24時間・3交代制
・公道実験の乗車員は必ず2名。車載機器の確認を行う人員と、システムが正しく作動しない「万が一の場合」に備えて運転の補助人員が運転席に座る
・公道実験の乗車員になるためのトレーニングはGM独自に作成したもの。カリフォルニア州が策定した公道実験のガイドラインは大まかな内容であり、実際に走行を行うためには実験実施者それぞれが独自の対応をしているのが実情
次ページ事故についての個人的な見解を聞いたが…
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