Uber事故を米自動車技術会が語らない不思議 自動運転は企業間競争を最優先していいのか

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そして、ウーバーやテスラなど、最近発生している自動運転がらみの事故についての個人的な見解を聞いたが、「ノーコメント」だった。

自動運転は企業競争が最優先なのか

WCX2018の開催中、自動車の研究開発に関して約1000案件が合計約1500時間にわたって発表された。筆者は自動運転、高度運転支援システムの安全性、EV、燃料電池といった分野を中心にセッションを聴講し、セッションの合間に日米欧韓中印などの自動車業界関係者らと意見交換した。

そうした中で、筆者が当たったかぎりではあるがウーバー、およびテスラがかかわる自動運転技術が関与する重大事故について、当事者意識を持って話そうとする人に出会うことはなかった。

そうした自動車メーカー、自動車部品メーカーのサラリーマンたち、また大学などの研究者たちにとって、自動運転は「すでに自動車メーカー各社の開発ロードマップに載っているものであり、後戻りできない」という意識が強いように感じる。

また、前述のキーノートスピーチで登壇したGM幹部は、SAEはEVの充電インフラなど技術の標準化・規格化において重要な立場にあるとしながらも、「自動運転技術は日々進化しており、これまでの自動車とは標準化・規格化の進め方が大きく違うはずだ」との見解を述べた。

これを筆者なりに解釈すると「自動運転は自動車メーカー・自動車部品メーカーにとって重要な競争領域であり、現時点でビジネスの成長の妨げになるような標準化・規格化は必要ない」と言っているように聞こえる。

GMは、自動運転やクルーズコントロールなどに関するヒストリックカーを並べて展示した(筆者撮影)

アメリカでは「SAE=GM」と呼ばれることが多く、こうしたGM幹部の発言はアメリカ自動車産業を代表しているように思える

自動運転について、道路交通法や道路運送車両法の解釈として、国連の欧州委員会で日本を含めた各国の協議の場がある。だが、自動運転レベルの規制でSAEが主導的立場をとったことでもわかるように、自動運転ビジネスについてアメリカの影響力は極めて大きいのが実情だ。

今回のWCXでの取材を通じて、筆者は改めて「企業間での競争が最優先されるような自動運転は本当に、このタイミングで世の中に必要なのか?」という疑問を抱いた。

そうした中、筆者の心が動いた瞬間があった。

スマートシティのパネルディスカッションで、ペンシルベニア州ピッツバーグとネバダ州交通局が、司会者の質問への回答の中で自ら、ウーバーやテスラの事故について意見を述べた。彼らはともに「自動運転は技術領域で語るのではなく、利用者である市民のため、人の生活の問題として議論するべきだ」と主張した。

これは日本に立ち返ってみても欠かせない論点ではなかろうか。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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