「精神障害の人は就労し始めは調子が良い人が多いです。中でも発達障害の方はもともと得意不得意がありますが、頭が良い人も多いですから。けれど自分の殻に入ってしまいがち。あと自信過剰の方が多い。『自分はできるんだ』って思っている人も多いのです。
確かにできる人もいるのですが、そうした障害の特性がネックになっていて力がつかないこともありますし、意欲が続かないと力が十分には発揮できません。
また、そうなったとき、会社のせいにしてしまうことがあります。自分は間違っていないが、職場関係が悪いとなったりするのです。それを理由にして『もういやだ、辞める』と簡単に辞めてしまうこともあります。そのため、精神障害者の平均勤続年数は4年3カ月と、身体障害者や知的障害者に比べて勤続年数が短いのです」
そう話すのは、一般社団法人「障害者雇用企業支援協会」(SACEC)の専務理事の障害者雇用アドバイザー、畠山千蔭氏だ。
「SACEC」は2010年12月に設立。主な事業内容は、企業に対する障害者雇用の相談(無料)、「特例子会社」の設立支援、障害者雇用相談企業のための関係機関への紹介、取り次ぎなどだ。
雇用側と就労側、両者に必要な心構え
「これまで10~15年ほど、障害者雇用については法定雇用率が0.2%ずつ上がる間に、企業が着々と努力してきた時代がありました。職域の開拓とか、特例子会社を作るかどうかなど、企業側は受け皿作りを一生懸命やってきました。
ところがここにきて急速に発達障害を含む精神障害者の雇用を進めなければならなくなったのですが、受け入れる下地がまだ十分にできていないのが現状です」(畠山氏)
今年からの雇用義務化によって、精神障害者に傾斜して採用する企業なども多くなってきているが、懸念材料も見え隠れしている。精神障害に対する理解は、ほかの障害に比べて進んでいないとされ、職場定着率も低い。では雇用側と就労側、両者にはどのような心構えが必要なのか。
厚生労働省が公表している「平成29年障害者雇用状況の集計結果」では、民間企業における雇用状況で、精神障害者は5万47.5人と、前年比べて19.1%増となっており、かなり伸びている。
※「精神障害者である短時間労働者の雇用人数算定方法の変更」で4月から精神障害者である短時間労働者(週20~30時間の勤務)で、所定の条件を満たす労働者については、これまで「0.5人」として計算されていたところ、「1人」として計算することができる。
「障害者の保護者やご本人を対象に、いつもお話ししていることがあります。今年から精神障害者の雇用が義務化になりましたが、『精神障害の人はすぐに辞めてしまう人も多いから』ということで受け入れ側の企業は不安なのです。それで、企業側も採用に苦労しているのです。精神障害者の皆さんにまず心掛けてほしいことは、『自分の障害を認めて受け入れてください』ということなのです」(畠山氏)
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