ルミネ、未来の顧客を増やす「ひみつ」とは? 駅ナカに甘えず、地道な戦略重ねていた
JR新宿駅の1日平均の駅乗降人員は約341万人。駅上という立地をただ利用するならば、この膨大な乗降客を取り込むために、老若男女が利用できる全方位展開という発想もあったはずだ。
それを女性に限定し、かつそれぞれのルミネに細分化したターゲット層を振り分け客層を絞る。ターゲットと定めた顧客の顔の見えるエッジの効いたマーケティング戦略を立てることにより、多くの百貨店がしのぎを削る新宿でルミネは一歩抜きん出た。
さらにルミネはまだ見ぬ「未来の顧客」へも入念なアプローチを欠かさない。諏訪氏と原田氏が「実は私たち、こんなものを作ったのですよ」と、うれしそうに1冊の本を見せてくれた。全国の小学校や図書館に無償配布される学研のまんがでよくわかるシリーズ「ファッションビルのひみつ」という漫画である。
小学生は未来の顧客
主人公は小学校5年生のリナ。元気いっぱいでリーダーシップはあるけれど、あまり身だしなみには興味がない女の子。新学期になり新しいクラスの代表委員に立候補するものの、おしゃれな男の子ジュンに負けてしまう。「自分がおしゃれじゃないから負けたんだ」と思い込むリナの前に現れたのはジュンの素敵なお姉さん・ルミネ勤務のユイ。「おしゃれもだけど、ほかに大切なこともあるかもしれないよ」と言うユイに連れられてルミネに行き、洋服やおもてなしの心に触れて成長していく、というストーリーだ。
イキイキと描かれたリナとユイとジュンのストーリーにきっと小学生女子たちは夢中になるだろう。しかし、なぜターゲット層ではない小学生にルミネの漫画を?と疑問に思った筆者にふたりは続ける。
「確かに小学生はまだルミネのお客さんではありません。でも1枚の洋服が、繊維から糸を作り、それが販売の現場まで届けられているという、ものづくりの川上・川中・川下を知ってもらうことにより、商品の価値を理解し大切にする気持ちを育んでほしいと思うのです」
「そしてルミネでお客さまに心地よくお買い物いただくためにどのような工夫がなされているかを知ってもらうことによって、次世代のルミネファンになってほしいと思っています」
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