ソニー「ハプティックベスト」は4Dを超えるか シーンに合わせ振動するベストを映画初投入

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今回のプログラミングは日本で行われた。同作を配給するソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの堀内啓映画マーケティング部エグゼクティブディレクターは「専門のプログラマーにお願いしたのですが、その都度、試写を行って調整していきました。たとえば、格闘シーンでは、全部にアクションがついていたが、そこからあえて殴られるところをメインに動きををつけ変えた。(主役の)ドウェイン・ジョンソンに殴られる機会もなかなかないですから」と明かす。

こうした逃げるシーンなど、さまざまシーンに合わせて振動や衝撃を”ベストに表現”させている (写真:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

さらに、映画冒頭に出てくるソニーのロゴに合わせて振動を起こし、後半の感動シーンではさざ波のように動いて、感動を増幅させる。もちろんドキドキするシーンでは、心臓の鼓動のような振動を加えている。「アクションだけでなく、感情を増幅させるような演出を行うべくディスカッションを積み重ねました」(堀内氏)。なによりも、作品そのものがアクションが多く、“ハプティクス化”しやすかったのも大きかったかもしれない。

既存設備に設置可能、導入コスト減に期待

このシステムは、既存の劇場内の各座席にハプティックベストを仕込むため、4Dシアターのような大規模工事をして新たに劇場設備を造る必要はない。だから導入コストを抑えることが可能だ。とはいえ、プログラミングおよびセッティングなどの準備にはある程度の時間がかかるため、営業中の映画館に仕込むにはハードルが高い。今回はTOHOシネマズ日比谷がオープンするということもあり、前もって設備を仕込むことができたということも大きかった。

「うちがほかのスタジオと違うのは、親会社ソニーの技術が生かせるということ。うちのコンテンツと、ソニーの技術を重ねることで、新しい付加価値を生むことができる。さらに技術、興行、配給という3社のタイミングがうまく合ったことで、この企画が実現できた」(堀内氏)

配信などの躍進により、映画を手軽に観られる時代となっている。そんな中で興行各社も、IMAX、爆音上映、応援上映など、プラスアルファの付加価値を付ける”演出上映”で、劇場に足を運んでもらおうと模索している。

「今回はあくまでもオープニングイベントの一環としてやるものなので、8日間限定となります」(TOHOシネマズ・マーケティング部の中嶋博明氏)と語る通り、3月29日から4月5日までの期間限定上映企画となる。「今後の上映は未定。まずはこの日比谷の興行が成功してから」(堀内氏)とのことだが、座席予約がすぐに売り切れるなど、早くも評判となっている。今後の興行界が手掛ける一手として注目しておきたい。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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