マレーシア人観光客が日本に殺到する舞台裏 2013年のビザ解禁以来、うなぎ登りで急増中
マレーシア人にはすでに日本に行ったことがあるという人が多い。JNTOの統計でも、半数以上が日本への渡航経験がある。
そのため、マレーシア特有の現象として、いわゆる「ゴールデン・ルート」が飽きられてきているというのがある。
日本観光のゴールデン・ルートとは、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪など日本の主要観光都市を周る観光周遊ルートのこと。
旅行会社を訪問すると、よく聞かれるのが「もう東京や大阪、温泉や買い物は飽きた。何か新しい観光地はないのか」という意見だ。
そしてゴールデン・ルートに代わって一昨年あたりから、北海道や飛騨高山、中央アルプスなど、新しい旅行先がマレーシア人に注目されつつある。なかでも北海道は直行便の運航開始もあり大人気。南国のマレーシア人にとって雪はあこがれで、流氷ツアーやスノースポーツなどに人気が集まる。また、合掌造りの写真で知られる白川郷も注目されている。
白川郷が人気になったのは、何といっても写真の力が大きい。人々はあの合掌造りの写真をみて、「ここに行ってみたい」と即決する。マッタ・フェアでお客様に対応していても、「あそこに行きたい」と白川郷の写真を指差すお客様は少なくないのだ。
実は、筆者もマレーシア人の友人に誘われて、2014年に生まれて初めて飛騨高山を観光したが、外国人の多さに驚いたことがある。
ちなみにこの友人は過去に10回以上来日しており、北海道や九州はそれぞれ1週間以上滞在している。東京マラソンにも河口湖マラソンにも参加し、もはやありきたりな観光地では満足しなくなってきている。求められているのは「新しい体験」、そして「SNSで友達に自慢できる写真」だ。
四国のお寺に宿泊してみたい人、北海道でスキーを楽しみたい人、誰にも知られていない新しい場所に行ってみたい人、地方のマラソン大会に参加したい人など、好みは千差万別になってきた。ある旅行代理店では「ツアー客は物作りや農業体験など、個人旅行では行きにくい体験型の観光を希望しています」と明かす。
出展者にも見られる変化
こうした消費者の嗜好に合わせ、出展者側にも変化が見られる。「以前は出展していた大阪や北海道などが出展せず、一方で知名度が低い県の出展が増えている」と話す関係者もいる。ゴールデン・ルートに代わる新しい体験を求める人々の出現で、地方にチャンスが回ってきたのだ。
マッタ・フェアではマレーシア人来訪者が日本地図をにらみながら、自作の旅程表を広げて、熱心に質問する姿がよく見られる。また、マレーシアでは以前は中華系の旅行者ばかりだったのが、最近ではマレーシアの過半数占めるムスリム(イスラム教徒)の旅行者がじわじわ増えつつある。
その変化をとらえようとしている自治体もある。岡山市は近辺の真庭市、吉備中央町とともに「ムスリムフレンドリー岡山」を掲げて、イスラム教徒の誘致を狙う。「体験型観光」を求める外国人に向けて、自宅を改造して寿司握りの体験ツアーができる施設を作る市民も出てきた。
岡山市産業観光局・観光コンベンション推進課の片岡高明副主査は、「岡山市には世界遺産がありません。そこで、観光拠点作りと、観光客誘致を同時に始めました。なければ作ってしまおうと、外国人の嗜好に合わせた観光素材を準備しています」と意気込む。この体験型観光は、現地の旅行社から聞くマレーシア人観光客の不満点を押さえているので驚くほどだ。
インバウンドはこれからいよいよ多様化する。観光地でなかった地方にも外国人がやってくる時代がくるのかもしれない。
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