「裁量労働制」、知らないと損する5つの注意点 実態と異なる労働時間、深夜割増の未払い…

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今後、ますます労働者代表の役割と責任は大きなものなっていくでしょう。変に安請け合いをしてしまうと思わぬところで会社と社員の板挟みとなってしまいます。では、労働者代表になった場合、どんな知識を最低限持っておく必要があるのでしょうか。

まず、裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。この2つ、対象となる業務と、導入のプロセスに違いがあります。

1)専門業務型裁量労働制

新商品の研究開発等その業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者に委ねる必要があり、使用者が具体的な指示や命令をしないこととする業務がこの制度の対象となります(労働基準法第38条の3)。「裁量がある」とは、自己の考えで判断し、業務を進めることができる事をいいます。したがって、新卒や社歴が浅い社員にはなじまない制度といえるのです。そして、対象となる業務も、

①新商品・新技術の研究開発等
②情報処理システムの分析・設計
③記事の取材または編集
④大学における教授研究
⑤税理士など

 

上記をはじめとする19の業務に限られています。また、これらの業務であっても、裁量労働制を導入するにはみなし労働時間等を定めた労使協定を使用者と労働者代表とで締結し、労働基準監督署長に届出なければならないのです。

2)企画業務型裁量労働制

「事業の運営に関する事項について、企画、立案、調査及び分析する業務」であって、「その業務の遂行方法を大幅に社員に委ねる必要がある」ため、その業務の遂行等に関し、会社が具体的な指示をしないこととする業務が対象となります(労働基準法第38条の4)。

経営企画の業務などが該当するのですが、この制度を導入するには専門業務型とは異なる手続きが必要となります。まず、対象となる事業場ごとに労使委員会を設置しなければなりません。

そして「対象労働者の範囲」「みなし労働時間」等、所定の事項について決議を行い、その決議届を労働基準監督署長に届出なければならないのです。なお、こちらは専門業務型と異なり、社員の個別同意が必要となるのも特徴の一つです。

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