東大卒「ときど」選手が語るプロゲーマー人生 eスポーツを舞台に海外でも活躍

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――ご両親は何と?

父親は堅い職業で東京医科歯科大の教授なんです。ただ、若い頃は本気でミュージシャンになりたかったらしくて、「おまえのやりたいことがあるんだったら、それに挑戦してみればいいじゃないか」って、僕の考えを尊重してくれました。

――ストリートファイターのような格闘ゲームの場合、勝負を左右するのはどんな要素ですか。大技を繰り出したりするボタン操作のテクニック?

技術であったりとか、反応速度、戦略を考える力、さらにメンタルも大事です。いろんな要素があって、それらの総合力で競う競技だと思っています。僕自身、昔は技術だけのプレーヤーでした。でも、プロになってしばらくすると、練習は誰よりもやってるはずなのに、以前のようには勝てなくなった。そのあたりからですね、「自分に足りないものは何か」と広い視野で考えるようになったのは。

プロ仲間と実践練習に励むときど選手。格闘ゲームは操作テクニックだけなく、戦略性や精神力などを含めた総合力を競い合う種目だと話す(撮影:梅谷秀司)

たとえば、「集中力」や「心の強さ」は、格闘ゲームで安定して勝つためにすごく重要な要素です。練習中ならできる複雑な操作も、大会ですごいプレッシャーがかかったときには、やはり精度が下がったりする。だったら、集中力を高めるために日々、どんなトレーニングをやるべきか。今はそんなふうに技術以外のことも強く意識しています。

――テクニックだけで勝てるほど甘い世界じゃない?

昔は技術だけでも勝てたんです。でも、みんなの技術レベルがどんどん上がって、今はもう90点以上の技術レベルの選手がザラにいる。そうなると、操作テクニックだけではトーナメントを勝ち抜けない。安定した成績を残すために毎日どんな取り組みをやっているかが大事で、僕はそういうことをまじめにやっている人こそがプロの選手だと思っています。

いい意味で世間を見返したい

――まだ海外ほどではありませんが、日本でも徐々にeスポーツが話題になり始めています。身の回りに変化はありますか。

やっぱり、こうやってメディアに取り上げてもらう機会が増えましたね。今まで親戚のおばさんにいつも説教されていたんですよ。「あんたいつまで、ゲームで食べていけると思ってんの」って。でもこの前、僕が紹介されたテレビ番組を見たらしくて、「あの練習量、すごかったわね」って褒められました(笑)。

――日本でもeスポーツを産業として盛り上げようと、業界団体が統合されプロライセンス制度を始めるなど、選手たちが活躍できる環境の整備が進み始めました。少なすぎるといわれてきた国内大会の賞金も今後は増えそうです。

いろんな意見があるみたいですが、あの昔のどうしようもなかった場末のゲーセンでやっていた頃よりは、どう考えてもいい方向に進んでいると思います。今、大きな大会はやはり海外なので、それを超えるくらいのすごい大会を日本で開催してくれたら、選手たちのモチベーションも上がりますよね。期待はしています。

一方で、ちょっと寂しい気持ちもあるんです。僕たちが子どもの頃は、親に隠れてゲーセンに行って、教頭の放課後の見回りをかいくぐりながら、恐いヤンキーに絡まれないよう知恵を絞ったり。みんなそうやって、格闘ゲームをやってきたんできすよ。どんどん競技として制度化されていくと、すごくキレイなものになっていって、そういう経験はもうしなくなっちゃうんだろうなって。

――ときど選手のプロゲーマーとしての夢は何ですか。

僕たちが格闘ゲームにかけてきた情熱、思いは、サッカーや野球など、ほかのスポーツに決して負けない。なのに、社会からは認められないまま、悔しい思いをしながらゲームから離れていった先輩や仲間がたくさんいる。だから、いい意味で世の中を見返したい。格闘ゲーマーに対する世間の評価を高めて、彼らの無念を晴らす。それが僕の大きな野望です。

渡辺 清治 東洋経済 記者
渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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