静岡発で快進撃するオーダースーツ店の正体 縮む市場に立ち向かう「着心地」「お手頃」
「毎年、一般向けに『エスパルスオフィシャルスーツ』という、選手と同じモデルの商品を1着2万9000円(税別)で販売しています。若いサポーターは『選手と同じスーツを着たい』と来店してくださり、静岡県外のお客さんも増えました」
スーツ離れの時代にどう訴求するか
とはいえ、今後もスーツ業界全体は厳しそうだ。冒頭で紹介した「紳士用スーツ市場」縮小を、筆者は次の理由で考えている。
(1)「クールビズ」の浸透と職場環境の変化
(2)少子高齢化でスーツ人口が減少
(3)スーツの価格下落
(1)は初夏から初秋まではスーツを着る機会が減る。IT業界の会社員など1年を通してスーツを着ないホワイトカラーも増えた。(2)は、特に人数の多い団塊世代(1947年~1949年生まれで700万人超)の一番下の年代(1950年の早生まれまで)が68歳以上となった。経営者・役員や一部の技能者以外は定年退職となり、スーツを着る機会が激減した。
(3)は歴史を振り返ると、スーツの価格を引き下げたのが「洋服の青山」(青山商事)などの量販店だ。同店の躍進に象徴される「価格破壊」は1994年の「新語・流行語大賞(トップテン入賞)」に選ばれた。これ以降、価格全体も下がり、市場縮小にもつながった。
いずれもスーツ業界全体では逆風だが、オーダースーツには追い風ともなる。たとえば(1)は、着る機会が少ないのなら「自分にあったオーダーメイドスーツを」と働きかけることができる。女性用も注目される。働く女性が当たり前となり、有力取引先との商談など重要な場面を担う女性が増えているからだ。
(2)では退職世代も一切スーツを着ないわけではない。「アーク」には「親戚や知人の結婚式があるのでスーツをつくりたい」という年配者も来店する。
「スーツを必要とする業界への『外商』もやめました。値引き要請や修理のたびに出向くので採算性や効率性もよくないからです。現在は個人客に特化しています」(千須和氏)
今後の同社の課題は、買収した長岡工場の安定稼働だろう。「SPA」(製販一体の製造小売業)としてきちんと生産していけば、ビジネスモデルはさらに強化されそうだ。
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